ラベルの貼り間違い 新型コロナで米国疾病管理予防センターが決定的ミス

Photo by David McNew/Getty Images

ラスベガスを訪れる日本人のなかには、ソウル経由で、ソウル発ラスベガス行きの大韓航空の直行便に乗る人が多いが、先日、太平洋を横断している間に、突然行き先が変わり、ロサンゼルスに着陸すると機内アナウンスがあり、乗客は騒然とした。

現在のところ日本からのラスベガス直行便がないため、大韓航空の直行便は、ソウルを経由するぶん搭乗時間は少し長いが、アメリカの空港に着いて、荷物を一度引き上げて税関を通してから、また国内線の手荷物検査に並ぶという煩雑さが省けるのは魅力だ。ソウルの空港ではなにかと日本語が通じるので、筆者も、英語に不自由な親族などにはこのルートを提案して喜ばれている。

では、なぜ、先日の大韓航空のラスベガス直行便は、ロサンゼルス空港に着陸することを余儀なくされたのか。何かの災害や飛行機のトラブルではない。機内に、過去14日以内に中国を訪れたことがある旅行者が3人いたことが、飛行中に判明したからだ。

ラスベガスの観光業は大打撃


現在アメリカは、中国を訪れた旅行客を他の客と区別して検疫を行っており、世界的な権威である米国疾病管理予防センターのインテンシブ検疫をできるチームとシステムを全米で11カ所の空港につくり、「中国滞在客」の検疫を、この11カ所に集中させている。残念ながら、ラスベガスはその11の中には入っておらず、やむを得ずロサンゼルスに降り立ったというわけだ。

3人の乗客の名前は開示されていないが、検疫の結果ウイルス感染はないということで同じ飛行機に全員で戻り、無事にラスベガスに到着したということだ。しかし約2時間の検疫による遅れは、アメリカの空港行政がこのほんの数週間で中国旅行客に対する徹底検疫の姿勢を強めたことを示し、全米に衝撃を呼んでいる。

いまのところ、14日以内に中国の土地(全土)を踏んだ人間は、アメリカ市民でない限り入国拒否をする体制をとっており、「中国の湖北省または浙江省から日本へ帰国する人間は検疫官に申告する義務がある」としている日本と比べて、その厳しい対応は比べものにならない。

国を挙げて強い姿勢で、アメリカは水際作戦に臨んでいるが、実は、後述するように、未曾有の事態への対応に「不慣れ」が露呈し、経済への影響を心配する声が高まってきている。

そもそも、ラスベガスのように観光業に極端に依存する土地では、すでにマイナスの影響はとても大きい。現在のラスベガスの観光業は中国人観光客に依存しているので、今年の最初の4半期の数字は、相当ダメージが出るものと地元はすでに身構えている。

とくに、マカオに大きなメガリゾートを持つラスベガスのホテルなどは、ラスベガスの不振に加えて現地での損失を抱え、報道によるとラスベガスのトップリゾートの1つであるウィンリゾートは、1日に約2億5000万円の損失を抱えているという。ちなみにウィンリゾートの売り上げの6割はマカオに依存しているが、現在マカオは閉鎖中であり、ウイルス感染の押さえ込みが長引けば長引くほどこの損失は大きく響いてくる。
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文=長野 慶太

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