一方、一般的な大都市になると状況は変わる。ニューヨークやサンフランシスコなどのチャイナタウンでも、中国人だから、中華料理だからと敬遠される様子は見当たらないという。春節で中国に帰っていた中国人のシェフなどが先の入国禁止処分にあって、店に帰ってこられなくなって縮小営業をしているケースが伝えられる程度だ。
一つのミスが他の拡散を呼ぶ
日本やアジア諸国と違い、マスクをしている人がほとんどいないゆえに、ニュースから目を離してしまえば、通常生活でコロナウイルスの存在を身近に感じることは少ない。また、ニュースでこれだけ取り上げられているにもかかわらず、株価は1月末前後の下落を回復したのちには相変わらず堅調で、まことしやかにささやかれていたチャイナショックを感じている市民はこれまでは少なかった。
確かに、感染者の母数が多くなってきたので、当然、「増加率」そのものは落ち着いて見え、それがゆえに株価が戻ったと判断するのは理解できる。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で、アメリカでの罹患者の数が増えてきたときに、限られた検疫設備では対応しきれなくなるリスクを指摘し、チャイナショックの可能性を警告した。
初期に情報を隠蔽する行動があったとして中国を批判したうえで、中国人を入国禁止で排除しても、すでに他のアジア諸国やヨーロッパでも感染者がいることから水際作戦の効果は薄いとしている。そして、その社説が出た13日には、たった1日で湖北省での感染者数が1万5000人、死亡者が242人も増え、事態は一段と拡大した。
さらに、予防の権威であるはずの米国疾病管理予防センターが大きなミスを犯した。中国から帰国して、サンディエゴの陸軍基地で検疫を受け、非感染者として帰宅を許されたアメリカ人が、検疫の検体ラベルの貼り間違いミスによって、実は感染者だったとわかった。同センターが謝罪し、感染者を引き戻すという事態が発生し、「慣れてない」ことが疾病予防の権威を落としている。
なんと皮肉で罰当たりなことに、この中国から帰国した約200名の「非感染者」たちは、陸軍基地で与えられたマスクを空に放り投げて、「放免」の喜びを表した。ところがこの200人のなかに、ラベル間違いミスの「感染者」がいたとみられ、今頃この200人はマスクを捨てたことを後悔しているはずだ。
先の大韓航空のように、搭乗時のスクリーニングが完璧にはいかないことが露呈されたこととあわせ、1つのミスやシステムの「穴」が他の拡散を呼ぶなか、水際作戦の実効性はたしかに疑問が残る。罹患者の1日も早い回復を祈りたい。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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