ビジネス

2020.02.22

ミラノで大盛況。日本の発信拠点「TENOHA」はなぜウケているのか|前編

「TENOHA MILANO」を運営する代表の菊池大樹(左)と日本オフィス代表の牧亮平


イタリア人の分業意識。愛情を持つと...


牧は「イタリア人スタッフは愛情を持つと、とてつもなく入れ込んでくれる一面もあります」とも語る。こんなエピソードを教えてくれた。

「イタリア人は分業意識が強く、自分の仕事の範囲を明確に線引きしようとします。店内にゴミなどが落ちていても拾わないホールスタッフがいました。注意をすると、『私の仕事ではない。クリーニングスタッフの仕事だ』と悪びれず答えるのです。それで、牧が自ら『お客様にとって快適な空間にするのが私たちの仕事。ゴミがあれば私も拾うし、気づいたらみんなで拾おう』と声をかけたのです。そこから従業員たちの意識も変わったと思います」

スタッフとの信頼関係をつくるには、そんな小さなやりとりの積み重ねの日々なのだ。牧は「とくにオープニングスタッフは、他にはなかなかない『TENOHA MILANO』で働いていることを誇りに思い、愛着を持ってくれているようです」と笑顔で話した。

日本を意識し、空間をあえて区切る。その心は…


TENOHA MILANOのレストラン店内には美濃和紙のモビールがある
天井から吊り下げられた美濃和紙のモビール。スイスのデザイン事務所の作品だ

ふとレストラン内を見渡せば、細やかな日本文化の演出がされていることにも気づく。天井に目を向けると、美濃和紙を使ったモビールのインスタレーションが展示されていた。これは、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションも手がけるスイスのデザイン事務所「アトリエ・オイ」の作品だという。

「TENOHA MILANO」は、前述したように日本文化の要素がふんだんに取り入れられているのに、なぜか日本らしくない。代表の菊池は「全体の設計は、ミラノの建築デザイン事務所『PARK ASOCIATI』が手がけています。日本人からすると、どうなの? と感じる部分もうまくデザインに昇華されていると思います」と語る。

例えば、レストランもショップと同様に高い天井だが、その下に黒い枠を入れて低く見せたり、店内の一部を区切って茶室のような半個室を取り入れたり、あえて制約を受けた限られた空間を生み出している。これは「日本のミニマリズムを体現するため」だという。イタリア人の感性で日本文化を再解釈してデザインに落とし込んでいるからこそ、日本人にとっても新しく感じるのだろう。

TENOHA MILANOレストラン内の半個室空間
レストラン内に作られた半個室の空間。パソコンで作業をしている男性がいた

レストラン内では、休日にも関わらず、日本のカフェのようにパソコンを開いて仕事をする人の姿もあった。この隣には、会員限定のコワーキングスペースとシェアオフィスがある。町家のような複合施設はまだまだ奥へと続く。なぜこれほど、従業員だけでなく、現地の人や企業からもこの施設は愛されているのだろうか。後編では、さらに「TENOHA MILANO」がミラノで支持されている要因を探りたい。

文=督あかり 写真=Christian Tartarello

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