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2020.02.22

ミラノで大盛況。日本の発信拠点「TENOHA」はなぜウケているのか|前編

「TENOHA MILANO」を運営する代表の菊池大樹(左)と日本オフィス代表の牧亮平


ミラノ万博をきっかけに、市民権を得た日本食


ライフスタイルショップの奥には、日本食のレストランが広がる。店内は100席あるが、休日の昼食時だけに多くの人で賑わっていた。箸でうどんをすする男性や、小さな子供を含む一家で期間限定のおせち料理に舌鼓を打つ人たちもいた。ちなみに、筆者は年末の平日にも一度足を運んでいたのだが、そのときも近くで働くワーカーたちで賑わっていた。

TENOHA MILANOでうどんをすする客
箸を使ってうどんをすする3人組の客

イタリアの季節食材を使用し、米やうどんなどは日本から輸入した食材を仕入れているため、日本本来の味わいが楽しめる。イタリアでアジア系の料理といえば、中華料理店が圧倒的に多いが、2015年に開かれたミラノ万博での食をテーマにした日本館の展示をきっかけに、日本食のレストランも急速に広がったという。

うどん、天ぷら、おにぎり、カツ丼などは、すでにイタリアでは日本名のまま市民権を得ていると言ってもいいだろう。「TENOHA MILANO」ではこの日本食レストランのほかに、ラーメン専門店も併設しており、ビーガン豆乳ラーメンなどの変わり種も人気だという。

一方、イタリアでは、進出を試みたものの、撤退する日本食の店もあった。日本で名の知れた大手飲食チェーンが2016年にイタリアに現地子会社を設立。2020年までに計15店へと拡大する予定だったが、すでにイタリアから撤退している。

TENOHA MILANOのうどん定食
天ぷら付きとおにぎりがついたうどん定食。だしが効いて優しい味わいだ

日本の食文化を発信、成功の要因は


では、「TENOHA MILANO」のレストランが、日本の食文化を発信する拠点として成功しているのはなぜなのか。

代表の菊池は「地域に根ざして勝負するのはハードルが高く、存在意義が求められる。イタリアでは言語の壁があり、労働者の権利意識も高いため、間に立ってビジネスができる人が必ず必要です」と言う。開店当初から、イタリア現地スタッフの雇用にも力を入れており、キッチンやホール、クリーニングスタッフなど10カ国以上の人も雇用してきた。なかには難民ビザを持つ人も含まれている。

また、親会社である欧州市場専門商社「佐勇」は、もともとイタリア食材の輸入専門商社であり、「イタリアでの土地勘がある」というのも成功の要因だという。

現地スタッフたちとのコミュニケーションで心がけていることは、「日本人特有の曖昧な言い方では、現地の人たちには通じません。やってほしいことははっきりと伝え、結果として給与に反映するように、わかりやすくシンプルに評価するようにしています」と菊池は答える。
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文=督あかり 写真=Christian Tartarello

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