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2020.02.22

ミラノで大盛況。日本の発信拠点「TENOHA」はなぜウケているのか|前編

「TENOHA MILANO」を運営する代表の菊池大樹(左)と日本オフィス代表の牧亮平


TENOHA MILANO店内
年始の土曜日、多くの人が品定めしていた

「日本の機能美」大人気。ビニール傘の評価は?


手前のライフスタイルショップで最初に目についたのが、日本のステーショナリーや雑貨だ。針を使わないホチキスや和紙のノートなど、「日本の機能美」を紹介する品揃えで、売れ筋の定番だという。さらにミラノでは、意外なものがプレゼントとしてウケているそうだ。

まず、スリッパだ。55ユーロと安くはないが、洗濯ができるニットのルームシューズタイプのもの。リバーシブルで両面使えて、実用的だ。イタリアでは自宅で靴を脱ぐ文化があり、夫の実家でもスリッパは必需品のようだった(ゲストは脱がない場合も)。

「イタリア人は、食事のために友達や親族を招くので、家を綺麗にしている人が多いんです。なのに、実用性も兼ねたおしゃれなスリッパは種類が少なく、人気があります」と案内してくれている菊池が言う。

ちなみに、日本のコンビニなどで販売される透明のビニール傘も、イタリアでは珍しいようで「おしゃれな傘」として受け入れられているそうだ。

スリッパと並ぶヒット商品は、招き猫だ。私が訪れたときには、店内にはスタイリッシュで大きめな白い招き猫がひとつ残っているだけだったが、少し前までは、色とりどりのミニサイズ(25ユーロ)の招き猫が並べられていたそうだ。菊池によれば、クリスマスに合わせて200個近くは売れたという。

「クリスマスのオーナメントとして、ツリーの周りにでも飾っているのでしょうか。想像以上に反響があり驚きました。不思議に思いましたが、ここナヴィリオ地区のレストランのレジに飾られているのも見かけました」

TENOHA MILANO内観
木のスプーンなど食器が置かれる陳列棚

日本製の調理器具や食器も人気商品だという。入り口近くに陳列されていた木工のクラフト製品は三重県産。木のスプーンや、フクロウの形をした箸置きなどを手に取るお客さんもいた。元大手自動車メーカーのデザイナーが手掛ける、5~10万円の穴織カーボンを使った高機能調理器具も、食の国であるイタリアらしく、店内では注目されているという。

日本の自治体や企業をPRする機能


「TOKYO TESHIGOTO」をPRするTENOHA MILANO店内のコーナー
自治体や企業のプロモーションを請け負うコーナー。訪れた時は、東京都の伝統工芸品が置かれていた

「TOKYO TESHIGOTO(東京手仕事)」という東京都のプロモーションのコーナーもあった。テーブルの上に、大型のデザインの本とともに、風呂敷、ジョウロ、おろし金、馬毛や山羊毛のブラシなどの商品が整然と置かれていた。

いずれも東京の伝統工芸品を国内外に発信するプロジェクト「TOKYO TESHIGOTO」の商品で、店内のモダンなレイアウトによって、「伝統」の重みがいい意味で軽減され、気分がそそられる。

このコーナーは、上の写真で見るようにテーブルひとつ分。日本の都道府県や企業向けに、期間限定でプロモーションのためにスペースを貸し出しているという。実は、ライフスタイルショップという形態を取りながら、「TENOHA MILANO」が手掛けるのは、自治体や日系企業を欧州市場向けに発信するプラットフォームとしての機能なのだ。これについては、案内の2人に詳しく話を聞いているので、後編でお伝えしよう。
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文=督あかり 写真=Christian Tartarello

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