※写真は、大塚国際美術館で撮影されたものです。

※写真は、大塚国際美術館で撮影されたものです。

「ビジネスパーソン、特にビジネスエリートにこそ、西洋美術史を学ばれることをお勧めしたいですね」

西洋美術史家・木村泰司はそう語る。

ビジネスに美術の知識が必要なのはなぜか。それは欧米で活躍するビジネスパーソンの多くが、一般教養として身についているものだからだ。

西洋美術史をさかのぼれば、美の規範が形成された原点・古代ギリシャにたどり着く。ギリシャ美術で追求された美の成果は「古典文化」として脈々と継承されてきた。そして、ルネサンス期から19世紀までの西洋美術史の流れを司ってきたのは、“人々の知性と理性に訴えるものこそ良い”という考えだった。なぜなら、そこに描かれるものは画家の個人的な感情や思想ではなく、神話のストーリーや宗教的な教え、政治的なメッセージ、日常生活に対する戒め――。

しかし、多くの日本人は、美術品を「感性」で捉えがちだ。そんな人々に「美術は見るものではなく読むものだ」と木村は説く。作品や画家を好き嫌いで判断する前に、まずはその歴史を学ぶことが重要なのだ、と。

「美術史とは、“何が美しいのか”を知る学問です。例えば、宗教にスポットを当てて世界史を学ぶよりも、美術史ならば手っ取り早い。旧約聖書と新約聖書の違いやカトリックとプロテスタントの違いも視覚的に理解できます。美術史はあらゆることにリンクしていますから、西洋のことが深く分かるのです。美術品とは、その国、その時代の政治や思想、経済的背景が造形的に形になったもですから。ビジネスパーソンが美術史の知識を身につければ、ビジネスの場で恥をかかずに済みます」
「ビジネスパーソン、特にビジネスエリートにこそ、西洋美術史を学ばれることをお勧めしたいですね」

西洋美術史家・木村泰司はそう語る。

ビジネスに美術の知識が必要なのはなぜか。それは欧米で活躍するビジネスパーソンの多くが、一般教養として身についているものだからだ。

西洋美術史をさかのぼれば、美の規範が形成された原点・古代ギリシャにたどり着く。ギリシャ美術で追求された美の成果は「古典文化」として脈々と継承されてきた。そして、ルネサンス期から19世紀までの西洋美術史の流れを司ってきたのは、“人々の知性と理性に訴えるものこそ良い”という考えだった。なぜなら、そこに描かれるものは画家の個人的な感情や思想ではなく、神話のストーリーや宗教的な教え、政治的なメッセージ、日常生活に対する戒め――。

しかし、多くの日本人は、美術品を「感性」で捉えがちだ。そんな人々に「美術は見るものではなく読むものだ」と木村は説く。作品や画家を好き嫌いで判断する前に、まずはその歴史を学ぶことが重要なのだ、と。

「美術史とは、“何が美しいのか”を知る学問です。例えば、宗教にスポットを当てて世界史を学ぶよりも、美術史ならば手っ取り早い。旧約聖書と新約聖書の違いやカトリックとプロテスタントの違いも視覚的に理解できます。美術史はあらゆることにリンクしていますから、西洋のことが深く分かるのです。美術品とは、その国、その時代の政治や思想、経済的背景が造形的に形になったもですから。ビジネスパーソンが美術史の知識を身につければ、ビジネスの場で恥をかかずに済みます」
では、私たちは美術品をどのように「読む」べきだろうか。

「まずは、西洋美術史全体の流れを知ることです。深く読み解くためには、絵画のジャンルを理解することも大切ですね」

14世紀頃からイタリアで始まったルネサンス期に飛躍的に発展した絵画芸術は、17世紀以降にジャンルが多様化し確立していった。描かれる題材ごとにジャンルに分けられて、さらには格付けされることによって、絵画のヒエラルキーが確立されたのだ。聖書や聖人伝、そして神話文学を主題とした「歴史画」を頂点とし、次に「肖像画」、「風俗画」、「風景画」と続き、最下層には「静物画」を置く。このヒエラルキーは、19世紀半ばまでヨーロッパの美術界と画家たちの活動を支配することとなった。

なぜ、「歴史画」の格が一番高いのだろう。それは、現代の美術館に飾られている美術品がどこからやってきたのかを考えればよく分かる。もとをたどれば、その多くは王室のコレクションだったということだ。

高い教養を持ち合わせ、当時の画家としては破格のエリート教育を受けていたバロック期のフランドルの画家、ピーテル・パウル・ルーベンスや、フランスに生まれてローマで活躍したニコラ・プッサンらは「歴史画」を多く描いている。

「『歴史画』の制作にあたっては、画面の構成力だけでなく古代建築などの考古学的な知識や物語を伝える構成力も要求されます。ですから、描く方も依頼する方も高度な教養を持ち合わせている必要がありました。彼らの顧客は、フランス王・ルイ13世やスペイン王・フェリペ4世といった人たちだったのです」

今日の美術館の多くは、ある一定の知識や教養を持った人たちが発注・収集した美術品を一般公開したものだ。それらは、啓蒙主義的な理論に則って美術館で公開されるまで、一般大衆が目にできるものではなかった。そのため、西洋絵画と向き合うためには、その背景を読み解く力を身につける必要性があることが分かるはずだ。
木村によると、ビジネスパーソンにとって美術史の理解を深めることは、社交のシーンでも重要な役割を持つという。

「欧米の方々は、社交の場では基本的に仕事の話はしません。政治や宗教の話はもちろんタブーです。日本では頻繁に交わされるお金の話もまずあり得ないでしょう。だからといって、音楽や小説の話をしようとすれば、バリエーションが多すぎて難易度が高い。その点、西洋美術くらいは、欧米のエリートならば当たり前に親しんでいますから無難な話題なのです」

特にエグゼクティブなポジションにいる人ほど、その地位にふさわしい現地の人との交流を通して、美術史の必要性を痛感している――。自ら指導する講義や企業セミナーなどを通して、木村はそう感じている。

「ビジネスディナーでの2時間、会話をもたせることができないようでは、商談相手としては見てもらえてもパートナーにはなれません。日本人と違って、食事の場で無礼講になりませんから。グローバルが叫ばれる中、マンツーマンのコミュニケーションはますます求められています。美術史の教養は、ビジネスパーソンとしてはもちろん、パーソナルな関係においても、必ずやコミュニケーションの窓口になるはずです。それに、美術の読み方が分かれば、その裏側にある国の歴史や価値観、文化を理解することになりますから、人生がもっと豊かになるはずです。実務ではなくリベラルアーツとして学ばれる方も増えてきています」
木村によると、ビジネスパーソンにとって美術史の理解を深めることは、社交のシーンでも重要な役割を持つという。

「欧米の方々は、社交の場では基本的に仕事の話はしません。政治や宗教の話はもちろんタブーです。日本では頻繁に交わされるお金の話もまずあり得ないでしょう。だからといって、音楽や小説の話をしようとすれば、バリエーションが多すぎて難易度が高い。その点、西洋美術くらいは、欧米のエリートならば当たり前に親しんでいますから無難な話題なのです」

特にエグゼクティブなポジションにいる人ほど、その地位にふさわしい現地の人との交流を通して、美術史の必要性を痛感している――。自ら指導する講義や企業セミナーなどを通して、木村はそう感じている。

「ビジネスディナーでの2時間、会話をもたせることができないようでは、商談相手としては見てもらえてもパートナーにはなれません。日本人と違って、食事の場で無礼講になりませんから。グローバルが叫ばれる中、マンツーマンのコミュニケーションはますます求められています。美術史の教養は、ビジネスパーソンとしてはもちろん、パーソナルな関係においても、必ずやコミュニケーションの窓口になるはずです。それに、美術の読み方が分かれば、その裏側にある国の歴史や価値観、文化を理解することになりますから、人生がもっと豊かになるはずです。実務ではなくリベラルアーツとして学ばれる方も増えてきています」
木村の講義において、美術史の必要を感じ始めている若い男性の受講者が急増しているという。日本では幸いにして美術館が充実しており、学ぶ環境には恵まれているのではないだろうか。

「東京では美術館の企画展が多く開催されていますよね。ただ、欧米の美術館のように常設展には恵まれていないのです。かといって、海外旅行や海外出張のタイミングで行くのも大変です。今日はパリのルーヴル美術館に行って、明日はサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、明後日はフィレンツェのウフィツィ美術館……なんてスケジュールは、無理な話ですよね」

美術史を学ぶという観点で木村がおすすめするのが、徳島県鳴門市にある大塚国際美術館だ。

「ここは学ぶ場所として最適です。そうした美術館の名画や、教科書に載っているような作品ばかりが揃っていますから。美術品として鑑賞するというよりも、テキストとして素晴らしい環境だといえます」

大塚国際美術館は筆跡まで精巧に再現された1000余点の「複製画」を展示している、世界で唯一の「陶板名画美術館」だ。

「私にとってここは、“ライブで美術史を学べる場所”。展示されているすべての作品が原寸大で再現されていて、時代順に展示されており、そして絵画のジャンル別に並べられているから作品同士を見比べることができる。そうした並べ方をしている美術館はなかなかありません。私が主催するツアーでもプライベートでも、何度も訪れています」
木村は大塚国際美術館で絵画を学べる一例として、ヤン・ファン・エイクの肖像画『アルノルフィーニ夫妻像』を挙げた。

「ヤン・ファン・エイクは、15世紀初頭に油彩画を完成させた画家のひとりであり、この肖像画も初期ネーデルラント絵画を象徴している作品でファン・エイクの代表作のひとつです。緻密な描写でシンボリズムが駆使されていて、例えばシャンデリアのろうそくの火(=神)や犬(=貞節)、そして靴を脱いで誓っているのも神の前にいることを意味し(旧約聖書の出エジプト記におけるモーセの「燃える柴」から)、この記念的な肖像画が表そうとしている意味・内容が読み解ける一枚です。ロンドン・ナショナル・ギャラリーではとても人気がある作品で、常に多くの人が鑑賞しようとしているうえ、作品のサイズも小さいため、大塚国際美術館で美術史の教科書として鑑賞することもおすすめです。鑑賞する際にはサイズもとても大事な要素なのです」(木村)

世界中の名画のみが飾られた「大塚国際美術館」の贅沢な空間で、“美術を「読む」”。その体験は、「感性」という曖昧なものに頼って鑑賞をしていた人々に、多くの情報量をもたらしてくれるはずだ。

「感性とは、知性の上に成り立つものなのです」と、木村は語る。

美術を論理的に読み解く力を身つけることではじめて、真の「感性」はその扉を開くのだろう。
木村泰司 きむら・たいじ◎1966年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を取得後、ロンドンのサザビーズ美術教養講座にてWorks of Art修了。講演会やセミナー、執筆、メディア出演などで活躍。著書に『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』や『名画の読み方 世界のビジネスエリートが身につける教養』(ともにダイヤモンド社 刊)や、『世界のビジネスエリートは知っている ルーヴルに学ぶ美術の教養』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。また、新刊の絵本『ルーヴル美術館でさがせ!』、『オルセー美術館でさがせ!』(ともにニコラス・ピロー著/フレーベル館 刊)では、日本語版監修を務めた。
※写真は、大塚国際美術館で撮影されたものです。
※写真は、大塚国際美術館で撮影されたものです。

Promoted by 大塚国際美術館 / text by Manami Abe / photographs by Johney Terasaka
/ design by Naoya Takata