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もちろん、バッタが発生した国々は手をこまねいて見ていたわけではない。大規模な防除活動を実施し、天候条件の助けもあり減少した地域もあった。しかしバッタの群れの発生地となったアラビア半島南部では、イエメンの内戦などがあり、調査や防除をする人の立ち入りが困難だった。

アフリカ東部では不遇が重なった。2019年10月にソマリア北部やエチオピアで洪水が発生、12月にはサイクロンが直撃。この時期は通常ならバッタの餌となる植物が枯れているころだが、大雨で植物は枯れず、バッタの繁殖が止まらなかった。

「大発生を未然に防ぐには、発生地域を常にモニタリングし、駆除する予防的防除(早めの対策)が欠かせません。今回は、例年にない大雨が立て続けに降った上、予防的防除が困難な地域がバッタの発生地となってしまった。それが今回の大発生を許してしまった原因の一つだと思います」

「立て続けにサイクロンが起きたのは、気候変動の影響だと言われています。また、サバクトビバッタは湿っている地中に産卵し卵が吸水する必要があり、さらに温度が高いほど発育が早まる。気候変動によって大雨が増えて気温も高くなれば、バッタがより短い期間で増える上、大群の発生頻度が増えて規模も大きくなる恐れがあります」

農作物だけでなくヤギやラクダの餌まですべてを一瞬で奪うサバクトビバッタ。生活に窮した農家や遊牧民が都市に流入し、社会問題になる恐れもあるという。

バッタを駆除する新兵器


このバッタに特徴的なのが、個体の密度によって行動、形態、生理的特徴を変化させる「相異変」という特殊能力だ。

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(c)FAO/Mohammed Abdulkhaliq & Ameen Alghabri. 「群生相」と呼ばれる、黄色に黒の斑点模様のサバクトビバッタ。風に乗って1日に100km以上も飛ぶ飛翔能力と、約5日おきに50〜100の卵を産む繁殖能力、さまざまな植物を食べる広食性を武器に、短期間のうちに増殖し生息範囲を広げて甚大な被害をもたらす。


「孤独相」と呼ばれる、緑色のバッタ。群れずに孤立して生活する。(前野浩太郎氏撮影)

普段は「孤独相」と呼ばれる状態で、密集せずにお互いを避けあう。大人しい性格で体色は緑や茶色で生活環境にカモフラージュしている。しかし、個体数が増えて他の個体と接触する機会が増えると、「群生相」に変化。体色は黄色と黒色のまだら模様になり、攻撃的に。同じサバクトビバッタだが、行動、形態、生理的特徴も異なる個体になり、大群をつくるようになる。

日本では、イナゴを佃煮にして食べる文化もあるが、バッタを食べて駆除できないのだろうか。「現地ではバッタを捕まえて食べていると聞きましたが、効率よく採集できないでしょうし、殺虫剤を散布しているので食べることは難しいでしょう」という。

現在、サバクトビバッタの対策は殺虫剤の散布が一般的だ。FAOの専門チームが情報収集や今後の被害の予想をしながら、被害国の政府が東アフリカサバクトビバッタ対策組織と連携して、地上と空中から殺虫剤を散布する。サバクトビバッタは殺虫剤抵抗性が低く、効果はてきめんだ。

文=成相通子

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