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リード・ヘイスティングス(Ore Huiying / by Getty Images for Netflix)

リード・ヘイスティングスはある日、返却を忘れていた『アポロ13』のレンタルビデオを自宅で見つけた。それをレンタルビデオ店のブロックバスターに返しに行くと、40ドルの延滞料金を請求された。彼はそこで考えた。「延滞料金がないとすればどうだろう?」と。こうして誕生したのがネットフリックスだ──。

ヘイスティングスと共に同社を創業したマーク・ランドルフは、新著『That Will Never Work(それは決して成功しない)』で「この話は美しく、有用で、マーケティング界で言うように『感情的には真実』だが、物語の全容ではない」とつづっている。

私は先日、ネットフリックスの誕生物語が始まった街であるカリフォルニア州サンタクルーズにて、ランドルフを訪ねた。私たちは、起業家が語る物語と、こうした物語がたとえ全てを語るものではなかったとしても共有するべき理由について意見を交わした。

人々がこぞって聞きたがる誕生秘話


突然のひらめきが起きるのはまれで、起業の道のりは通常、複雑だ。それでも私たちは、ひらめきの物語を聞きたがる。「りんごの木の下に座っているアイザック・ニュートンのもとにりんごが落ちてきた、という類いの話を人は求めている。しかし、実際の話はそれよりも複雑なことが多い」とランドルフは語った。

「(ネットフリックスの物語)はうそだろうか? いや、これは物語であり、それも素晴らしい物語だ」。ランドルフいわく、ネットフリックスの物語の全容は「ごたごたした」ものだという。

例えば、このネットフリックス誕生物語には、ヘイスティングスとランドルフがサンタクルーズの自宅からシリコンバレーに出勤するため自動車の相乗りをしていたときに、ランドルフがヘイスティングスに提案した多くのアイデアが含まれていない。

個人に合わせたシャンプーや、カスタマイズしたドッグフードのネット販売など、実現しなかったアイデアが省略されているのだ。また、ネットフリックスがここまで成長するまでに経験した数カ月にわたる調査や長時間の会議、障壁、苦労、瀕死状態に陥ったことなどが省略されている。しかし、これは長いバージョンの話であり、人々が聞きたい誕生秘話ではない。

編集=遠藤宗生

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