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「メディアや投資家、ビジネスパートナーは、こうした話を聞きたがらない。きれいにまとまり、リボンがついた話を聞きたがっている」とランドルフ。「リードはそれをほぼ即座に察知し、この物語を思いついた。これは簡潔で明白で、記憶に残る素晴らしい物語だ。この物語は、ネットフリックスの存在意義を凝縮したもので、私たちにナラティブを与えてくれた」

ランドルフによると、成功を収める起業家は、ある重要なスキルを持っている。それは、人が企業の理念とのつながりを感じられるような物語を紡ぎ出し、同じ方向に「両者の羅針盤を合わせる」能力だ。良い文章の書き方やスピーチの仕方を学び、力強い物語を共有することは、全ての起業家とビジネスリーダーが努力して身につけるべき「底なしのスキル」だとランドルフは語った。

ネットフリックスは順風満帆ではなかった。ランドルフとへースティングスは、数年の間、昼夜問わず働き、それでも経営に苦労していた。さらに、シリコンバレーのスタートアップ各社から資金を奪った2000年のドットコム・バブル崩壊が追い打ちをかける。ただこれが、もう一つの素晴らしい物語の背景となる。

ブロックバスターのCEOに笑われる


2000年9月、ネットフリックスの売上高は500万ドルに達しようとしていた。一方のブロックバスターは、約9000店舗から年間60億ドルの売り上げがあった。ブロックバスターが巨人のゴリアテだとすれば、ネットフリックスはそれに立ち向かうダビデだった。その後、ゴリアテがどうなったかはご存知の通りだ。

ランドルフとヘイスティングスは、ブロックバスターに身売り案を提示するためダラスの同社本社を訪ねた。ブロックバスターがネットフリックスを5000万ドル(約55億円)で買収すれば、ネットフリックスは結合されたネット事業を運営するという内容だった。

ヘイスティングスがプレゼンテーションを行う中、ランドルフはブロックバスターの最高経営責任者(CEO)が笑いをこらえていることに気づいた。2人は、他に生き残る方法を見つけなければならなかった。

現在、ネットフリックスの時価総額は1500億ドルに達し、独自コンテンツは数々の賞を受賞している。一方のブロックバスターは経営破綻した。

ランドルフは基調講演やメディアとのインタビューで、ブロックバスターに事業を売り込んだときの話を頻繁にしている。この物語には2つの意味がある。

1つ目の意味としてランドルフは、「スタートアップで働く人に対し、何でも実現できるのだと伝えることができる。多くの負債を抱え、ドットコム・バブルの崩壊の最底辺にいて、ビデオ業界での経験がない会社でも、業界のリーダーである60億ドル規模の会社に最終的に勝ることができるのだ」と述べた。

またランドルフは2つ目の意味として「大企業で働く人にとっては、非常に異なるメッセージが秘められている。それは、会社の規模と優位性は永遠に続かないということだ。大企業にも弱点はあるということ。さらに、その弱点が将来どこから来るのかは分からないということ。自分自身を破壊する意思がなければ、誰かに自分の事業を破壊させる機会を与えることになる」

ダビデとゴリアテの話が時代を超えて人の共感を得るのは、それが何度も繰り返されてきたからだ。ランドルフは、起業家とビジネスリーダーに必要な重要なメッセージを理解させるため、ブロックバスターの話を使っている。

最終的に、短い物語と長い物語は両方とも必要だ。素晴らしい誕生物語では多くの点が省略されているが、起業家はだとしてもこうした物語を語る必要がある。長い方の物語は、大成功を収めた後に執筆する本のために取っておこう。

編集=遠藤宗生

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