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CureAppのCEO 佐竹晃太

「Forbes JAPAN」の起業家ランキング特集にて、毎年掲載している「日本のスタートアップ大図鑑」。国内有数のベンチャー投資家約50人にアンケート取材を行い、2020年に注目するスタートアップについて200社を一挙掲載。今回、200社の中から特に注目すべき企業を3社、ピックアップした。1社目は「治療用アプリ」を開発するCureApp。


病気は、薬か手術で治療するもの──。その常識に、2014年創業のCureAppが挑んでいる。開発したのは、ニコチン依存症治療(禁煙治療)用のスマートフォンアプリだ。18年末に治験を終え、薬事申請の手続きが進行中。20年内の保険適用を目指す。承認されれば、日本では初の「治療用アプリ」が誕生する。

CEOで呼吸器内科医の佐竹晃太は「患者の行動変容を促す。いわば、体ではなく心への治療が可能になる」と説明する。

使い方は簡単だ。医師は診察時に、患者の基本データをシステムに登録したうえで、アプリを「処方」する。患者はそれに、日々の喫煙の有無や気分などを入力する。すると、状態に合うアドバイスや励ましがリアルタイムで届く仕組みだ。例えば、「タバコを吸いたい」と入力すると、「ガムを噛みましょう」「部屋の掃除をしましょう」など、欲求を和らげるための具体的な行動が提案される。

禁煙治療で壁になるのはニコチンへの「心理的依存」だ。従来の薬を使った治療では、医師が診察室の外の患者の行動にまでコミットすることは難しい。佐竹はこれを「治療空白」と呼ぶ。

「治療開始から半年後の禁煙継続率は一般的に40%程度。単純比較はできないが、アプリの治験ではこの数字が63.9%に達した。『治療空白』を埋めることができるこの技術は、ほかの精神疾患や生活習慣病にも有効だ」(佐竹)

開発のきっかけは13年、アメリカに留学した際に触れた数々の研究結果を通し、治療用アプリの可能性を認識したこと。すでに同国ではスタートアップによる開発が進み、25年には治療用アプリ市場が1兆円規模に達するとの調査もある。日本国内では14年、薬事法(現・薬機法)の改正で、開発参入が可能になった。

医療の専門性にテクノロジーをかけ合わせ、新たな治療の選択肢を切り開く──。保守的な業界のなかでその道のりには険しさもつきまとうが、前進を支えるのは「患者にとって『あるべき医療』を追究したい」という一医師としての矜持だ。

19年3月に米国子会社を設立し、7月には総額22億円の資金を調達。禁煙治療用アプリの海外展開を進めつつ、すでに臨床研究を終えた高血圧治療用をはじめ、対象疾患も広げていく予定だ。


佐竹晃太◎慶應義塾大学医学部卒、日本赤十字社医療センターなどで臨床業務に従事。呼吸器内科医。中国、米国への留学を経て、14年に同社を設立。

文=加藤藍子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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