地球温暖化を防ぐことを目的に、各カーメーカーがさまざまな代替エネルギーを試している。しかし、もう一つ、ゼロ・エミッションでありながら、自然に作られるクリーンなエネルギーがある。それは、太陽から伝わる「ソーラーパワー」だ。
ソーラーパワーと聞いて思い浮かぶのは、一般家庭の屋根付き太陽光発電パネルで湯を沸かす光景だろう。ところが、オーストラリアには、その太陽光エネルギーの利用を大きく促進させるイベントがある。2019年10月13日~20日に開催された、「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ(BWSC)」だ。日本、英国、米国、オランダ、ドイツ、中国、チリ、イタリア、スウェーデン、トルコ、タイ、サウジアラビア、オーストラリアなど、21カ国から44チームが参戦した。
このイベントの面白い点は、参加者やサポーターがモータースポーツの“エンスー(熱心な自動車愛好家)”ではないこと。科学者や技術者、または環境保護活動家が中心なので、サーキットで行う通常のレースとはかなり雰囲気が違う。ほとんどの参加者は各国の一流大学の大学生で、チームエントリーも大学チームが多い。
僕が会ったチームメンバーの中でいちばん感心したのは、米名門スタンフォード大学在学中の女子学生2人だ。彼女らは、このソーラーチャレンジが終わったら、そのままイーロン・マスクが創業した米宇宙開発企業「スペースX」に入社するという。2人は「このラリーで学んだソーラーとバッテリーの技術を、スペースXで生かせればいいなと思っています」と語った。
1987年に始まり、今年で第15回を迎えたこのイベント。参加者は、ノーザン・テリトリー州のダーウィンから南オーストラリアのアデレードまで3021km走破する。まずは予選。スタート前日に、3連覇中のオランダ「ヴァッテンフォール・チーム」と、2回の優勝経験を誇る「東海大学ソーラーカーチーム」といったチームがダーウィン郊外のサーキットに集まり、全開で1周回って最速タイムを競ってスタート・グリッドを決める。
そして10月13日午前8時半には、ダーウィン中心街から数十秒の間隔で各マシンがスタートを切った。毎日午前8時から午後5時まで走行可能な時間で競い、夜は停まった場所でそのままテントを張って寝る。カンガルーやエミューなどの野生動物がコースに出没することもあるし、砂漠を走るわけだから寒暖差も激しい。