乳がんという「転機」


乳がん初動のイロハ、書き留めなければ


この日は、バストバンドアッパーという胸巻きを外す許可が出た。いっしょに巻いていた巨大なガーゼも取れて、すっきりした。お風呂に入ることができないのに、汗をかくので、バストバンドアッパーがべたついて不快極まりなく、そろそろ買い替えなければと思っていたところだった。外したあとは、即、捨てた。

体にくっついていた装備が、一つずつ外れていくにしたがって、気持ちもだんだん落ち着いてきて、乳がんの初動に関するこれまでの経験を書き留めておきたい、と思うようになった。

私は、親友で医師のMの導きとサポートがなければ、確実に路頭に迷っていた。でも、世の中の乳がんになってしまった人には、Mはいない。つまり、多くの人が、重要な判断を迫られるたびに、どうしたらいいかわからなくて途方に暮れているのではないか。

私も、まず「カテゴリー5」からつまずいた。カテゴリー、クラス、ステージ、違いをちゃんと理解していないと何もわからない。検査を受けるのも、検査結果を読み解くのも、わからないことばかりで不安なのに、ちょっと調べ始めると難しい内容ばかりで、理解が進まない。どこで精密検査を受けたらいいのか、どんな基準で病院を選んだらいいのか、次に考えておかねばならないことは何か……何から何までわからないことだらけのまま、治療が進んでいく。

自分にはMがいて、手術も無事終わって、入院生活にも慣れてきて、書く余力がある。ということは、乳がんになってしまった人の役に立つ何かを書け、という思し召しなのではないか。善は急げ! パソコンも持ってきたし、忘れないうちに、やるぞ。

そのように勝手に思い込んだ結果、残りの入院期間は、何もすることがないときはパソコンに向かった。胸筋を使うせいか、痛みが走り、少し疲れるが、書き留めておきたいことがあふれてきた。

自分の体に興味を持つ


手術の体感時間は1分だったが、終わってみると、左肩や肩甲骨がコリコリにこっていて、やはり大仕事だったのだなあと思う。昨夜も2時間寝たところでヘンな寝汗がドバっと出て、着替えたのだが、そこから寝られなかった。明らかに、体が何かと戦っている感じがする。傷口を治すためだろうか。

Mは、その通りだと言う。肩こりも、体位が固定されていたことと、自分が緊張していたために体に力が入っていたせいとのこと。術後は特に夜に熱が出る。でも、それも術後数日のことで、逆に熱が出ないと治りが悪くなる。肩には湿布が効くので、お願いしたら出してくれるはずとのアドバイスをもらった。

文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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