反省を踏まえて、多くの改良が加えられる
そのInfinity Flex Displayを採用した2019年秋発売の「Galaxy Fold」は、開くと約7.3型の大画面、閉じると約4.6型のスリムさで話題を集めた。フォルダブルに対応したAndroid 10の公開が2019年9月だが、GoogleのみならずAndroidデベロッパーコミュニティの協力を得てアプリ最適化などの作業が進められており、Android陣営としてのフォルダブルに対する力の入れようが窺える。
Galaxy Foldは相当な難産のすえ誕生したデバイスだ。折り畳んだ際にディスプレイ表面に貼られた保護シートが原因でディスプレイを破損する問題や、ヒンジ付近の隙間に埃や異物が入り込む問題が判明し、当初2019年4月発売予定のところ数回にわたり延期された。
20万円超とハイエンドスマートフォンの中でも抜きん出て高価なこともあってか、韓国メディアYonhap News Agencyの報道によれば、2020年1月時点での累計販売台数は「40万から50万台程度」に留まっている。
Galaxy Foldの動向をフォルダブルという新プラットフォーム特有の"産みの苦しみ"と捉えれば、今度のGalaxy Z Flipには期待できる部分が多い。反省を踏まえてか、多くの改良が加えられているからだ。
サムスンのフォルダブル第1弾「Galaxy Fold」 写真=SAMSUNG NEWS ROOM
筆頭に挙げられるのは、ディスプレイ表面の素材。Galaxy Foldは樹脂製のフィルムだが、Galaxy Z Flipでは厚さ1ミリ以下と薄いガラスパネルが採用されている。樹脂よりガラスのほうが傷がつきにくく、指で触れたときの感触が良好で皮脂汚れも拭き取りやすい。
フォルダブル端末の設計でもっとも困難とされるヒンジ部も改良されている。内部にはブラシ状のパーツが加えられ、開閉時に埃や異物が入りにくくなったという。角度を無段階で固定(Galaxy Foldは数段階)できるようになり、写真撮影時の位置決めも容易になった。
フォルダブルの動向を占う試金石になる
製品コンセプトも一新。Galaxy Foldは「広げればタブレット」だが、Galaxy Z Flipは「小さく畳めるスマートフォン」を訴求点としている。折り畳んだときには操作できないものの、通知などは1.1インチOLEDディスプレイで確認できるため、いちいち開かずに済む。女性にとっても、小さい端末のほうが扱いやすい。
1380ドルという価格もポイント。1000ドル以上の端末は敬遠されるという消費者意識調査の結果もあるが、この価格帯で選ぶユーザは米国や日本にはいまだ多く、中国勢とも競合しにくい。
4G LTEモデルのみで5Gには非対応、防水・防塵性能もなければmicro SDカードスロットもないという潔さだが、従来にないデザイン・使い心地を提供する端末であることは確か。第1弾のGalaxy Foldに比べ手を出しやすい価格に設定されたこともあり、フォルダブルの今後を占う試金石的デバイスになるはずだ。