トレードオフと戦い続ける
──チームのスピード感を維持するために工夫されていることはありますでしょうか?
ハイスピードで事業が動いていると、時には経営者が知らないことも多々出てきます。知る努力はもちろんした上で、時には「諦める」ことも肝心です。
日本交通の社長をしていた頃は、組織の隅々まで意識が通っている感覚がありました。でもJapanTaxiはとにかく「スピード」が早いので、意識が行き届かない部分もどうしても出て来てしまいます。
「コミュニケーション」や「リスクマネジメント」は工数が発生するため、常に「スピード」とトレードオフの関係にあります。このバランスを調整するのが経営者の仕事です。
JapanTaxiはとにかく引きちぎれるほどの「スピード」で走らないと意味がないことをやっている。だからこそ日本交通の時よりも「諦める」判断も多々求められます。
最適な「スピード」は産業やサービスによって異なるので、そのバランスを見極めてマネジメントしていくことが大切だと思います。
──「スピード」で失われがちな「品質」の担保もバランスということでしょうか?
スピードを上げるだけなら簡単ですし、品質を上げるだけなら簡単です。このトレードオフと戦い続けるのが経営者の仕事です。状況によって判断は異なりますし、全員を幸せにはできないという諦めも時には必要でしょう。
私たちの今の舵取りが良いかどうかは3年後、5年後の結果でしか判断できません。一つだけ確かなことは、我々が戦っている「IT×モビリティ」の世界は、元のタクシーの世界より何倍ものスピードで動いているということです。
それぞれの世界に合わせて適切な「スピード」感を調整することが、経営者の役割だと信じています。
連載:起業家たちの「頭の中」
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