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2020.02.27

前途多難の日本のカジノ、救世主は米国で解禁の「スポーツ賭博」か?

日本では大阪の夢洲がIRの最有力候補地とされている(Getty Images)

全米13の州で解禁されているスポーツブック(カジノで行うプロやアマチュアのスポーツに対する賭け)の賭け金は、毎年増加している。これは、今後のアメリカのカジノ経営の行方を占うだけでなく、環太平洋のなかで最も出遅れた日本のカジノについても参考になりそうだ。

シーズンによって差はあるが、1949年から合法化されているネバダ州の場合、コンスタントに毎月200億円から600億円の賭け金がプロやアマチュアのスポーツに投じられ、その7%前後の数十億円が、カジノ側に残る粗利益として計上されている。

しかし、注目すべき点は、ネバダ州以外のスポーツブックだ。例えば、ニュージャージ州においては2018年の6月に解禁となり、まだ1年半の歴史しかないが、すでに毎月400億円近くの金が賭けられ、まもなくネバダ州のそれを抜かすという予測もされている。

あるいは、大都市フィラデルフィアを抱えるペンシルバニア州では、ほぼ1年前に合法となったばかりだが、すでに月当たり、開始フィーバーで湧いた最初の月のなんと60倍、60億円もの賭け金を得るに至っている。

スポーツ界とカジノ業界は犬猿の仲


実は、アメリカのほとんどの州で、このように2018年、2019年と立て続けにスポーツブックが解禁になったのは、強烈な「立役者」がいたからだ。

それは、先の2016年の大統領選挙に出馬し、途中で立候補を取りやめ、トランプ政権誕生のキーマンとなった元ニュージャージー州知事クリス・クリスティだ。ニュージャージー州は、アトランティックシティのカジノ街がどんどん寂れるのに危機感を抱いて、何とかスポーツブックをカジノに導入し、治安も悪くなっていたアトランティックシティの再生を図ろうとしていた。

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元ニュージャージー州知事クリス・クリスティ

弁舌の立つ有力な共和党派の知事というだけでなく、連邦検察局の検事でもあったクリスティが旗を振るのならと、プロスポーツが多いアメリカの北東部を中心に市民の支持も上昇し、連邦政府は、スポーツに対する賭けを全面的に禁止(ネバダ州を除く)していた法律を2018年に26年ぶりに改正し、一挙に12州がスポーツブックに参入したというわけだ。

実は、これまでスポーツ界とカジノ業界は犬猿の仲にあった。スポーツの人気を維持するためにも、スポーツの公正性、つまり八百長のないことが重要であることはいうまでもない。しかし、スポーツも人間のやることなので、賭け事と一体になった八百長事件は根絶できない。

メジャーリーグ史上最高のバットマンと言われたピート・ローズが、自らが監督として指揮するシンシナティ・レッズの試合に、野球賭博で賭けていたことが表面化すると、彼は野球界から永久追放となった。その後、何度も公的に謝罪をして野球界への復帰をコミッショナーに嘆願しているが、野球界はそれを固く拒絶している。

そんな事情もあり、野球界は長年ギャンブルの街であるラスベガスを敵対視し、どんなにラブコールを送っても、この200万人都市にチームを持ってくることを許さなかった。
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文=長野 慶太

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