謝罪は弱さの証ではない 謝ることの大切さ

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謝罪は通常、2つの要素から成り立つ。それは、自分の不適切な言動を認めることと、それによって相手を傷つけたことへの後悔の念を示すことだ。私たちは、謝罪は人として正しい行いだと教わってきた。

だが、最近は謝罪を避けるような風潮もある。謝罪とは自分の悪い行いを認めることであり、人は自分の責任の範疇を超えたものにまで謝っている、という考え方だ。世の中には、パソコンで謝罪の言葉をタイプすると警告が表示されるブラウザ拡張機能まで存在する。

女性は男性よりも謝る頻度が高いという説は長く語られてきた。しかしカナダのウォータールー大学が行った研究では、自分が無礼な言動をしたと思った場合に謝る頻度は女性も男性も同じであることが分かった。さらに、女性が謝る回数は確かに男性より多かったものの、それは自分が無礼な言動だと思うものの数が男性よりも女性の方が多いからだということも示された。

ここで一つ疑問が生じる。女性は男性と比べて、自分に対してより批判的なのだろうか? この研究で留意すべき点としては、「無礼な言動」とされるものが自己申告に基づいていることがある。研究の世界では、自己申告に頼ることは一定の問題がある。

米ノックス大学が行った別の研究ではまず、被験者の罪と恥の意識の尺度を測る質問をした。研究チームはその後、被験者に(実際には遅刻していなかったものの)あなたはこの実験に遅刻したと告げ、相手の謝罪の程度を観察した。すると、罪の意識がより高いとした被験者の方が謝罪する傾向が強く、恥の感情は謝罪の程度とわずかな相関関係しか示さなかった。

罪悪感と恥は微妙な感情であり、ネガティブな感情として同類に扱われることが多い。罪悪感は、自分が不適切や悪いと思う行動に対して覚える決まりの悪さだと言える。一方で恥は、自分自身が不適切あるいは悪いと思う万国共通の感情だ。自分という存在全体が悪いと感じる時に、謝ることは難しい。

自制心の強い人は弱い人に比べて、自分の間違いについてメールなどで謝罪することが多い傾向にある。強い自制心とは自分の衝動を抑える力であり、満足感を得るのを遅らせることなどが含まれる。さらに、行動を抑止するだけでなく、望ましい行動を強化することも含まれる。

例えば、ある作業の最中に、同僚に夕食に誘われたとする。だがその作業を1時間以内に終わらせなければ、自分は職を失う恐れがある。あなたは同僚の誘いを断り、仕事を終わらせるべく一層集中する。一方で自制心の弱い人は、楽しい時を過ごしたいがあまり、自分の行動の結果をろくに考えず同僚の誘いに乗り、仕事を期限通りに終わらせられない。
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編集=遠藤宗生

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