外国人が選ぶ2010年代傑作日本アニメ10選。『進撃の巨人』も


『人類は衰退しました』(アニメインターナショナルカンパニー)


この作品も終末世界を舞台にしているが、『新世界より』のスタイルとはまったく違う。語り手である女性〈わたし〉は、衰退した人類と、人類に代わって地球を支配する〈妖精さん〉の間を取り持つ“調停官”。その仕事を通して、〈わたし〉はどんどん奇妙な状況に巻き込まれていく。

荒唐無稽なコメディが展開されていくなかで、読者の予想を裏切る〈わたし〉の腹黒い内面が明かされ、読後になんともいえない余韻を残す。

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『人類は衰退しました』の世界では、妖精が世界を支配している(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784094516326)

『つり球』(A-1 Pictures)


「釣り」と「宇宙人」という摩訶不思議な取り合わせの物語の中心にいるのは、人づきあいの苦手な少年だ。江ノ島の高校に転校してきた主人公ユキの不安感は、寄せてきて彼を飲み込もうとする「波」によって描かれる。

そんなユキは、クラスメイトと宇宙人と秘密組織の人間という、およそありえない取り合わせの友人たちとの、釣りを通じた交流に安らぎを見いだす。しかし友人たちは実は、それぞれ違う目的を胸に抱いて一緒に釣りをしている──。

シュールでばかばかしい設定なのに、驚くほどハートウォーミングな話に仕上がっている。

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ユキは釣りで不安感を克服していく(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784758012775)

(今回は選ばれなかったが、2012年ではこの作品にも注目だ。『坂道のアポロン』(MAPPA、手塚プロダクション)『ココロコネクト』(SILVER LINK)『PSYCHO-PASS(サイコパス)』(Production I.G)『しろくまカフェ』(studioぴえろ))

2013年


『進撃の巨人』(ウィットスタジオ)


舞台は、人類にはまったく未知の存在である貪欲な巨人が闊歩する世界。巨人に母親を食われた主人公エレンは復讐を誓う。しかし巨人の力はあまりにも大きく、その願いはおよそ遂げられるとは思えない。

物語では人類は徹底的に、死と隣り合わせに生きる「敗者」として描かれる。

この作品が『ナルト』や『ブリーチ』といった古典と並び称される作品になったことには、悲惨な設定の中にも散りばめられたブラックユーモアとアクションが功を奏している。

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『進撃の巨人』の主人公エレン(中央)とその仲間たち(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065102169)

『有頂天家族』(P.A.WORKS)


人間に化けるタヌキの仲良し家族の物語と思いきや、その見かけとはまったく別物だ。原作は森見登美彦の同名小説。

主人公の三男矢三郎は「面白きことは良きことなり!」という父の言葉に従い、京都で面白おかしく暮らしている。京都のお馴染みの名所が随所に描かれ、ストーリーに華を添える。

ところが一家はどこへ行っても常にトラブルに見舞われる。物語の核となるのは、昔、家族を襲ったある悲劇で、矢三郎はあえて窮地に踏み入り、絡み合った謎の糸を解きほぐしていく。

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古都・京都を舞台にした現代のファンタジー(https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784344834569)
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翻訳・編集=黒木章人/S.K.Y.パブリッシング

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