世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

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新型コロナウイルスをめぐって、根拠のない情報が大量に拡散する「インフォデミック」が問題になっている。新しい病気で情報も限られている中で、センセーショナルで断定的な言葉ほど人々の注目を集めてしまう傾向がある。

センセーショナルでなくても、根拠のある科学的に正しい情報を多くの人に伝えるにはどうすればいいのか。「根拠を具体的に示し、不利な情報も出して、一緒に考えてもらうことが重要だ」と指摘するのは、『「家族の幸せ」の経済学』(光文社刊)を執筆した東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎氏。

同著は、昨年サントリー学芸賞を受賞し、週刊ダイヤモンドの「経済学者・経営学者・エコノミスト107人が選んだ 2019年『ベスト経済書』」第1位に選ばれるなど話題を集めた。

経済書と聞くと、小難しい内容を想像するが、結婚、出産、子育てといった身近な話題について「高校生でも読めるように」と平易な言葉が使われ、その親しみやすさや意外な面白さから、専門家だけでなく一般読者からも支持された。

・母乳育児の知能・行動面に対する影響は、確認できない。
・働く女性の子どもは、低出生体重児になりやすい。
・幼児教育は、教育を受けた幼児の知能への影響よりも、将来の問題行動を減らす効果が大きい。
・離婚しやすい法制度になると、女性の自殺が減る。

これらは同著で紹介された家族にまつわる研究結果の一例だ。当たり前に思うものもあれば、意外と知られていないものも多い。なぜいま、「家族」の正しい知識を伝える経済本が話題なのか。著者の山口氏に聞いた。

10年前の研究結果でも新鮮味がある


──同著が話題になった理由について、ご自身はどう分析されていますか。

結婚、出産、子育ては、誰にとっても身近で手に取りやすい話題だ。この話題を扱った本は山ほどあるが、感情的だったり理念だけだったりで、数字に基づいて書かれたものが少ないと感じていた。

既存の一般向けの本は、科学的根拠の濃淡よりも、センセーショナルな内容が選ばれてしまいがち。読者がびっくりするような論文を出して、学術的な信頼性は必ずしも高くないのに『これにも科学的な根拠がある』と言っているものが多く、不満に感じていた。

論文が1本あるからといって、それがすぐに事実だと証明されたわけではない。その後の複数の研究で検証されて「これは信頼できる」と専門家の間で認識される。単に面白い(信憑性は十分ではないが意外性のある)論文が学術誌に掲載されることもあるが、そういった論文が確固たる事実として紹介されると混乱を招いてしまう。

構成=成相通子 

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