ビジネスデューデリジェンスで、合併後の企業価値向上の可能性を見極める

林嘉禾は、子供の頃から生物が好きだった。大学は農学部に入学し、分子生物学を専攻した。植物をより早く、美味しく成長させるためにいかに効率よく栄養素を取り込ませるか、基礎研究に時間を費やし、農学の博士号も取得した。

その後、国内の戦略コンサルティングファームで経験を積み、今はアクセンチュアの戦略コンサルティング本部M&Aチームにて、M&Aにおける主要な活動のひとつであるビジネスデューデリジェンスに携わっている。
林嘉禾
ビジネスデューデリジェンスとは、M&Aを検討しているクライアントから依頼を受け、買収先の企業のリスクや問題点、さらには合併後の企業価値向上の可能性を見極める業務だ。現状分析、業界分析、競合の分析、M&Aによるシナジー効果予測、カット可能なコスト算出など、扱う範囲は幅広い。

アクセンチュアでは、まず林をはじめとするM&Aプロセス全体の専門家である戦略コンサルタントを中心にプロジェクトチームが編成され、さらにそこに各インダストリーの専門家がアサインされる。たとえば、ヘルスケア分野でのM&Aであれば、製薬や医療業界に精通したコンサルタントをアサインするといったかたちだ。システム統合にともなう影響分析を行う必要があれば、デジタルやITなどの技術に詳しい専門家を呼ぶ。

「アクセンチュアは、コンサルティングファームの中では規模の大きな部類に入ります。これだけ人材がいると、ニッチな分野の専門家まで社内で見つけることができます。クライアントは当然ながら高度な専門性を求めているので、この体制・規模感は大変助かりますし、クライアントにも満足いただいています」

林は、M&Aに精通したクライアントのひとつである、投資ファンドのプロジェクトを担当することが多い。彼らは投資家から資金を集め、増やして返すことを目的にM&Aを行うため、ビジネスデューデリジェンスに関する要求水準は高く、よりシビアな見立てが必要となるのだ。タフな仕事だが、アクセンチュアのスケールメリットを上手く活用することで、クライアントに価値を提供している。

デューデリジェンスの主目的の変化
ビジネスデューデリジェンスにおける最も重要な課題は、リスクや問題点の洗い出しであったが、近年、よりシビアに企業価値向上の実現性を見極めることが求められている

PMIによって言語も文化も異なる企業の合併を円滑に行う

ビジネスデューデリジェンスと共に、M&Aチームのもう一本の柱となるのがグローバルPMI(Post Merger Integration)だ。林は、このPMIにおいてもアクセンチュアがスケールメリットを発揮していると感じている。

ビジネスデューデリジェンスと共に、M&Aチームのもう一本の柱となるのがグローバルPMI(Post Merger Integration)だ。林は、このPMIにおいてもアクセンチュアがスケールメリットを発揮していると感じている。

「M&Aは結婚に例えられることが多いですが、その例えでいうと、PMIとはお互いを尊重しながらうまく新しい生活を送れるように、結婚後に実生活のすり合わせを行うことです。めでたく企業同士のM&Aが成立した場合、類似した部門の整理や、ITシステムの統合など、通常業務を行いながらも新たなプロジェクトをこなさないといけません。

また、異なる企業カルチャーを持つ同士での統合となると、コミュニケーションの問題も解決する必要があります。日本企業と海外企業でのM&Aとなると、言語や文化の壁も課題になるため、実績のあるコンサルティングファームにPMIを依頼するケースが増えます。アクセンチュアは世界各国にオフィスが存在しているため、その国のビジネス事情に精通した現地メンバーの力も借りることができます。クライアントもそこに価値を感じているようで、グローバルM&Aの場合は特に、PMIまでお任せいただけるケースが多いです」。

大学の研究職からコンサルタントへ。そしてアクセンチュアへ転職

林がコンサルティングファームに務めるのはアクセンチュアが2社目だが、そもそも、農学で博士号まで取得した林が、なぜコンサルタントの道に入ったのか。

林は言う。「修士・博士と5年間あまり研究を行いましたが、アカデミックな世界にとどまらない、もっと広い世界を見たくなりました。また、日本ではアカデミックを取り巻く環境は厳しいのが現状です。多くの研究者は一つのことに没頭できる熱意を持ち合わせているのですが、『社会への還元』という視点はその限りではないと感じていました。しかし上手く社会に還元できなければ、アカデミックを取りまく環境は厳しい状況が続くでしょう」。

そして、林はコンサルティングファームを選んだ。博士課程の同級生9名のうち文系就職は林のみだった。「アカデミックを知っている自分がビジネスを学ぶことで、いつか恩返しができたらと考えました。ただ、博士まで取り、人より5年遅い就職になるので、普通に過ごしていたら5年遅いだけの人になってしまう。少しでも早くビジネスを学び、身に着けることができる場所――。3ヶ月単位でプロジェクトが回るコンサルティングファームは、数多くの業界を知ることができ、様々な課題解決手法やビジネススキルを身につけられるのではないか、そう考えてコンサルタントになることを決めました」。

少しでも早く成長したい。コンサルタントとしてひたすら仕事に打ち込み3年あまりが過ぎた頃、林の頭によぎるものがあった。「経営層の方々と一緒に仕事をさせていただく中で、業界を問わず、経営者がデジタルを意識する時代になってきたのを感じました。デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉も浸透してきましたし、これからビジネスを追求するうえでも学ぶ必要があるなと」。

そこで目を付けたのがアクセンチュアであった。「外から見ていて、アクセンチュアはストラテジーやコンサルティングに、デジタルを取り入れるのが非常に上手いと感じていました。既にノウハウが蓄積されている環境で学んだ方が早く成長できます。また、M&Aでデジタル関連の会社を積極的に買っていることもあり、今後もデジタルケイパビリティが拡充され続けるだろうと推測しました。大きなM&Aを行うには、企業規模もある程度大きい必要があります。この点もアクセンチュアの魅力でした」。

ビジネスデューデリジェンスでもデジタル領域の強さが光る

アクセンチュアに入り予測は実感と変わった。林はそのデジタルケイパビリティの高さに驚いたという。ソフトウェアでもテクノロジーでもデジタル関連の企業を扱う際は、自社でデジタルマーケティングに携わる専門家に、領域に関する情報や将来性を詳しく聞くことができる。また、「企業価値を上げるためにデジタルを使いたい」と考えているクライアントには、自社のデジタルコンサルタントやエンジニアを連れて行き、見込みや投資額の算定など具体性のある提案をすることができる。

ビジネスデューデリジェンスの段階でも、デジタル関連の専門家やエンジニアの力を借りることができるのは高いバリューとなる。お互いの会社のシステムを分析することができ、統合をする際の仕様案を作成できるので、精度の高い費用見積もりの作成が可能になる。

「企業にとって、M&Aはその将来を左右する一大事です。そのような重要な場面を、コンサルタントとして手伝えるのはうれしいことです。さらにアクセンチュアのスケールメリットを活かして、より精度の高いビジネスデューデリジェンスを提供できることに誇りを持っています」と林は語る。

研究者とコンサルタント、求められるスキルに共通点は多い

アカデミックからビジネスの世界へ――。大きな転換に思えるが、林は「実際はそうではない」と答える。アカデミックで身に着けたスキルは、コンサルタントの業務でもおおいに活用でき、親和性も高いと感じている。

「コンサルタントの仕事は、仮説を立てて、検証して、その結果を踏まえたロジカルな洞察を提供することです。アカデミックで行う研究は、まさに、こうした作業の繰り返しです。教員や学生同士で常に議論を行うため、人のアイデアやよい意見を素直に取り入れ、駄目なところはきちんとロジカルに説明することができます。これもまた、各専門家とプロジェクトを回していくうえで大変役に立っているスキルです」

日本企業が関わるM&Aは7年連続して増加しており、2018年には3,591件と、過去最高を記録した。アクセンチュア自体も、デジタル関連のM&Aを積極的に進めデジタルケイパビリティを強化していくという。常に自身も成長しながら、クライアントにバリューを提供するM&Aチーム。彼らによるビジネスデューデリジェンスやグローバルPMIを待ち望むクライアントは後を絶たない。


戸田敏治 = 文 西川節子 = 写真