ビジネス

2020.02.12

「パラサイト 半地下の家族」の快挙を生んだ、サムスン創業者の信念

Eric McCandless via Getty Images


そして赤字脱出、世界に羽ばたく「Kプロダクト」


イ会長は最近、「CJの究極の目標はグローバル1位の生活文化企業」とし、その実現に向けての新たな挑戦に踏み出している。これは「2030年に3つ以上の事業でグローバル1位に」という、CJグループによる「ワールドベストCJ」の目標と一致する。

世界中の人を、映画のみならず韓国「文化」のとりこにするという実現難易度の高い目標も、しかしあちらこちらで可能性が現れてきている。たとえば「CJ BIBIGO」社の「ビビゴ 王餃子」は、すでにアメリカ市場1位を獲得し、売上は年々急成長だ(編集部注:日本でも大型量販店「コストコ」などで販売され話題)。最近ではアメリカの冷凍食品会社シュワンズを買収し、成長速度が一層早まる見通しだ。CJグループCGVが独自開発した五感体験型4DX映画館は60カ国以上に進出し、正面と左右側面の3面マルチスクリーンを備えるScreenXは16カ国以上に輸出済みだ。


2018年、米ロスアンジェルスで開かれた「KCON 2018 LA」で、韓国企業の「Kビューティー」製品を試す西洋人観客たち/写真:CJ

文化事業は、ただ製品を売って利益を得る製造業とは異なり、他産業にまで影響力を広げる起爆剤としての役割も大きい。その証拠に、世界最大の韓流フェスティバル「KCON」では、文化韓流が経済韓流へと広がる現場を目撃することも珍しくない。韓国のアーティストやカルチャーへの関心は、韓国の製品や食べ物といったライフスタイル全般へと拡大し、ひいては産業全般にまで経済効果を及ぼす。

実は、CJがKCON開催で得る収益は、かろうじて赤字を免れるレベルだという。それでも年々、規模を拡大して開催する理由は、「文化」に寄せる信念にほかならない。文化は未来の糧になる産業だという確信、そして文化産業を通じて国家の経済全般にプラスの影響をという意思の下、KCONはグローバルな舞台に「韓流を乗せて飛ぶ」、最大のフェスティバルにまで成長した。

サムスングループ創業者、イ・ビョンチョルの「信念」を受け、長きに及ぶ赤字決算に耐えて「文化」を発信し続けたイ・ジェヒョン会長の夢と野望は、「パラサイト」後、どこに向かうのだろうか。

翻訳=荻島啓子 編集=石井節子

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