ビジネス

2020.02.12

「パラサイト 半地下の家族」の快挙を生んだ、サムスン創業者の信念

Eric McCandless via Getty Images


韓国初のシネマコンプレックス「CGV」
Shutterstock

CJは映画に次いで、1990年代後半にはケーブル放送事業にも進出、投資を始めた。CJは、人気番組の再放送に留まっていた当時の慣行から脱し、直接コンテンツの製作に乗り出した。

文化事業を目指すイ会長の歩みは、常に順調だったわけではない。皮肉にもCJが文化事業を始めたちょうどその頃、韓国はIMF通貨危機に見舞われた。国家をも揺るがす財政難の中で、一民間企業が赤字ビジネスを続行することは、事実上非常に危険なことだった。同時期に映画事業に進出したサムスングループやテウグループがこぞって撤退(CJの「前身」第一製糖は1993年にサムスングループと分離)した理由も、そこにある。

実に20年間。耐え続けた赤字決算


継続した投資の成果も、おいそれとは出ない。映画、音楽、ドラマ、ミュージカル各部門を統合し、「CJ E&M」社を設立した2011年以降の実績推移を見れば明らかだ。2013年、かろうじてゲーム事業部門で営業利益667億ウォン(約62億円)をあげたものの、営業利益率は3.4%と極めて低い。とくに音楽事業部門は1500億ウォン(約140億円)の損失を出した。ゲーム事業が「ネットマーブル」社へと分離した2014年は、当初から赤字。実に、文化事業に最初に足を踏み入れた1995年から2014年までおよそ20年もの間、赤字から脱出できたときはなかったのだ。そればかりでなく。どん底にあったCJが製作した映画「王になった男」は政治論争に巻き込まれ、誤解も受けた。

果敢な投資が失敗に終わることも多かった。2011年開封の映画「マイウェイ 12000キロの真実」は、中国、ドイツ、ロシアなど大陸横断ロケを敢行し、製作費に300億ウォンを投資した大作だ。しかし、観客動員数は損益分基点500万名に遥かに及ばない200万名。また、韓国初の3Dアクションブロックバスターとして期待された「第7鉱区」は完成度が低いとしてバッシングも受けた。

しかしこうした試行錯誤も近年、「CJ ENM(CJ E&MとCJ Oショッピングが合併して設立)」社が仕掛け始めたコンテンツ製作の滋養分となったようだ。音楽オーディション番組「スーパースターK」をはじめ、テレビドラマ「恋のスケッチ ~応答せよ1998」「トッケビ ~君がくれた愛しい日々」、バラエティ番組「ユン食堂」など、代表的な人気コンテンツが立て続けに誕生し、1760万名もの観客を動員した映画「バトル・オーシャン 海上決戦」は、封切りから5年を過ぎた現在も、国内で歴代観客数1位の地位を守っている。
次ページ > 世界中の人を韓国「文化」のとりこにする

翻訳=荻島啓子 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事