ビジネス特化型ネットワークサービス「リンクトイン(LinkedIn)」は2月12日、日本を含むアジア太平洋地域、北米・南米、欧米、中東における世界22カ国を対象とした「仕事で実現したい機会に対する意識調査(Opportunity Index 2020)」の結果を発表した。
この意識調査は、「今後1年の経済への展望」「今後1年の個人的な経済状況」「幸福度」「親との比較」「国内における仕事関連のチャンスの有無」「今後1年の仕事関連のチャンスへのアクセスし易さ」「成功するという自信」という7つのカテゴリーにおける質問をもとに、経済状況や幸福度(個人の実感や親との比較)、仕事で成功する自信などを指標として算出。結果を国別・男女別・世代別で比較することで、世界の労働市場をより深く理解することを目的としている。
調査の結果、日本は7つのカテゴリーのうち5カテゴリーで最も低い数値を記録。22カ国の中で、最も自信がないことが判明した。リンクトインによれば、「平均指標より2割も低く、日本人は海外諸国と比べて仕事や成功への自信がなく、悲観的である」という。
リンクトインは2018年に同様の調査をアジア太平洋地域9カ国を対象に実施しており、今回で2回目の調査となる。今回、調査を実施した経緯について、リンクトイン日本代表の村上臣は「前回の調査でも日本は最下位だったのですが、グローバルで見たらどんな結果になるのか。個人的にも興味がありましたので、2回目を実施してみることにしました」と語る。
日本人は成功するために「運」が必要だと思っている
今回の意識調査において、村上が「非常に面白い結果」と語ったのが、人生で成功するために重要なことに対するグローバルの意識の差だ。
「人生で成功するためには、何が重要だと思いますか?」という問いに対し、日本も世界同様に「一生懸命働くこと」が最上位の項目としてあがってきたが、世界では「変化を喜んで許容すること」「ふさわしい人々とのつながりやネットワーク」と続いていくのに対し、日本は世界で唯一、2番目の項目として「幸運」が重要であると回答している。
「この結果からも分かる通り、日本人はキャリアに対して主体性よりも外的要因任せの傾向を持っています。一括新卒採用や終身雇用などの従来の日本型雇用から抜け出せない現状のまま、どうやってキャリアを積んでけばいいか分からずにいる。その結果、仕事で成功している人に対して、『なんであいつが出世してるんだ』『あいつは運がいいよね』という発想に至ってしまいがち。ここがジョブ型雇用が主流の世界と日本の差なのかなと思います」
また、日本人の回答では男女格差も浮き彫りとなっており、「機会均等(社会的平等)」が重要であると回答している男性は56%であるのに対し、女性は68%と大幅に上回る結果になった。「この結果は、社会に対して女性が不平等を感じている裏返しなのかな、と思います」と村上は語った。
日本人は恋愛や子どもを持つことに消極的
そのほか、「良い生活に重要なものは何か?」という質問に対し、日本を含めた世界で「良好な健康状態」がトップに。一方、世界では「経済的自立」が29%で続くのに対し、日本では「精神的な豊かさ」(世界との差は25%)となり、生活において経済面よりも精神面を強く重要視していることが判明した。
日本を世代別に紐解くと、良い生活を送るために「健康」を重視しているのはジェネレーションX世代(39-54歳)、ブーマー世代(55-65歳)が6割以上であるのに対し、38歳以下の若い世代は4割以下。それに反して、「精神的な豊かさ」に関しては最も若いジェネレーションZ世代(18-22歳)が45%を記録したほか、「優れたワークライフバランス」の項目でも、ジェネレーションZ世代は34%、ミレニアル世代(23-38歳)は24%を記録するなど、中高年よりも高い数値となっていた。
「それ以外について、個人的に面白かったのは『愛情のある関係』が世界で3位、特に欧米では20%以上が「子ども」が幸福な生活に重要な要素であると回答しているのに対し、日本では「愛情のある関係」は6位(21%)、「子ども」が12%にとどまっていることです。この結果から、日本人は人生において恋愛や子どもを持つことに消極的な傾向があり、それが結果的に少子化の現状につながっているのだと思います。『おひとりさま文化』が根強く残っていて、ひとりで楽しく、安定して働きたいと人が多いということですね」