航空業界のリサーチ企業OAGによると、世界の航空会社の欠航件数は、2月の第1週の7日間で2万5000件以上に達したという。OAGによると、世界の30の航空会社が中国便の運航を一時停止しており、週あたり8000席の販売が停止された。
武漢で12月に発見された新型コロナウイルスの感染者数は2月10日時点で、世界4万人以上とされ、900人以上が亡くなっている。
航空会社が被る損害額は、2003年のSARSと同レベルに達すると専門家は予測する。「新型肺炎はこれまでを上回る件数の、航空便のキャンセルを発生させている」とOAGのアジア部門主任のMayur Patelは述べた。
シンガポールの経済紙Business Timesによると、2003年のSARSはアジア太平洋地域の航空会社の年間売上の8%を奪い、60億ドルの損失をもたらしたという。SARSは香港や台湾、中国を中心に猛威をふるっていた。
香港の航空関連のアナリストのEric Linによると、中国に本拠を置く航空会社は既に、予定されていた航空便の少なくとも50%をキャンセルしたという。ここに含まれるのは、中国国営の中国国際航空や中国南方航空、さらに民間企業の海南航空などだ。
台湾の航空会社や香港のキャセイパシフィックも、売上の大半を中国便に依存しているため、ダメージは大きい。さらに、ユナイテッド航空やブリティッシュエアウェイズも、中国便を運休させた。
米国の格付け会社ムーディーズは1月31日のレポートで、感染が中国以外に拡大した場合、航空会社の損失はさらに増えると予測した。「原油価格の下落により損失の一部は相殺されるが、ビジネスモデルが脆弱な航空会社が被る損害は不可避であり、回復には時間を要する」と同社は述べた。
ただし、SARSと同様のパターンが今回も再現されるとしたら、感染拡大の収束と共に、需要は急速に回復するはずだとアナリストは述べている。北京の国際空港から飛び立つ旅客数は、SARSの収束の1カ月後に最大を記録したと中国の人民日報は当時、伝えていた。
香港のアナリストのLinは、今回の新型肺炎も感染拡大の収束とともに、航空会社にV字回復をもたらすと述べている。海外への渡航を見合わせていた旅客らが、一斉に航空機の利用を再開することで、急激な需要増が見込めるという。
「感染拡大が収束すれば、ただちに需要は回復し、売上も元のレベルに戻ると見ている」と、OAGのPatelも述べた。