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2020.02.11 11:30

イケアが進める都心部進出、「駐車場がない店舗」を出店へ

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また、BrainTrustの議論に参加したパネリストの多くが、この戦略は、人口動態に関するさまざまなトレンドに照らし合わせて理にかなっていると評価した。

「複数の世代で都心部への回帰の動きがあることを考えると、こうしたタイプの店舗はアメリカの都市部にぴったりだ」と述べたのは、シティ・スクエア・パートナーズ(City Square Partners)のプレジデントを務めるマイケル・タープコッシュ(Michael Terpkosh)だ。「退職時期を迎えたベビーブーム世代の人たちは、重くてかさばる箱を自力で運びたくはないはずだ。特に、配達と組立のサービスが利用できるとなればなおさらだ。若い世代も、自ら汗を流す必要がなく、店舗まで自動車で乗り付けなくても済む便利さを求めている。誰もが得をする戦略と言えるだろう」

「もしイケアが(他の小売業者でも理屈は同じだが)、うたい文句通りの配送サービスを実現できるなら、都市部の店舗は、駐車場やガレージがなくても繁盛する可能性がある」と、リテール・テクノロジー・グループ(Retail Technology Group)の代表を務めるボブ・アムスター(Bob Amster)は書いている。「本日、別のリテールワイヤーでのディスカッションでも指摘されたように、世の中の流れは変わりつつある。現在働いている世代は都心部に住みたがり、自動車に乗らず、徒歩や公共交通機関での移動を好む。家具のような大型の商品を販売する小売業者ですら、都心での事業展開が可能になったのは、これが理由だ。しかも、関係するすべての人や事柄(消費者、販売業者、環境)にメリットがある」

駐車場を持たない店舗の建設計画は、イケアが都市向け戦略を開始してから2年を経て発表されたものだ。これは、都市生活向けの、より小規模な店舗の展開に特化した戦略で、配送とこれに関連するサービスに重点が置かれている。

また、ウイーンに建設される店舗の設計にみられる「グリーン」な要素は、店舗に車以外の手段で訪れるよう顧客に促す施策と共に、イケアが新たに打ち出した環境への取り組みとも合致するものだ。イケアは、カーボンフットプリントの削減に向けた包括的な計画を策定しており、これにより同社の事業はあらゆる面で変貌すると、ファスト・カンパニー(Fast Company)誌は伝えている。

この変化は、これまでは使い捨て的なものと思われがちだった同社製品の設計方針にまで及ぶという。同社はまた、2030年までに「クライメート・ポジティブ」(温室効果ガスの削減量が排出量を上回る状態)を達成するとの目標を掲げている。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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