ラグビー日本代表、快進撃の舞台裏──ベスト8進出を支えた「脱・根性論」戦略

史上初ベスト8進出を果たしたラグビー日本代表(Gettyimages)


なぜゴルフカートやドローンが登場したのか。練習の効率化への追求


日本代表がとった対策は、「練習で対戦相手の強度を体感すること」だ。つまり、ボールインプレイが40分以上のセッションを行うことだ。

そこでライブデータが活躍する。浜野氏らはスポーツ分析ソフトウェア「Hudl Spot Code」を使い、練習中にライブでデータを入力していた。ボールインプレイが何分か、ラックの回数は何回かなどを計測し、40分以上に到達するようにコミュニケーションし、練習の組み立てを行った。

トレーニングの効率を高めるため、リアルタイムのデータを用いてすぐに修正する体制を整えた。そうでなければ、練習終了後のミーティングでコーチと選手がなぜ40分に到達しないのかを話し合う。修正は翌日になる。

だが、リアルタイムのデータにより、選手やコーチはたった今の練習のデータがその場でわかる。その場で何を修正しなければならないのかを話し合い、練習を再開して修正を図る。


浜野氏が見せた日本代表のある日の練習データ。


スコットランド戦の試合のデータ。ボールインプレイは40分に達しなかったが、見事に勝利を収めることができた。

リアルタイムデータの見せ方も工夫した。ゴルフカートにTVモニタを装着したものを用意し、映像をすぐに取り込んでみせる。選手は即座に振り返り、修正ができる。

その他にも、ジムとの移動コースなどにモニタを設置することで、選手たちが手軽にアクセスできるようにした。「一度に大量の情報を選手に与えるのではなく、必要な時に必要な情報を、必要な場所でみせるようにした」と浜野氏。


ゴルフカートにモニタをつけ、その場で共有、その場で修正を支援した。

ライブデータで追いきれないこともある。そこで、全体を俯瞰することを目的としたドローン、選手一人一人の動きやコミュニケーションを見るためのGoProアクションカメラなど複数の方法で映像を取得し、「多面的なレビュー」ができるようにした。

この他、選手一人一人のパフォーマンス強化のため、ライバル選手と自分とのパフォーマンスを比較できるような取り組みも行っていたという。これらを通じて、目指したのは「一度のトレーニングで最大効力を発揮させる」だ。


多面的なビューのために複数の動画を撮影した。左はGoPro、右はドローンからの映像。同じプレーでも得られる情報が異なる。

「準備には、具体的で客観的な情報が必要。対戦相手のぼやけた情報が明確になる」と浜野氏。「自分たちのKPIを各試合でどうだったのかを常に追っていた」──徹底した客観性に基づいたトレーニングが、初のベスト8進出というあの結果につながったのだ。
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文・写真=末岡洋子

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