メディアを通じて選手の努力を知り、歓喜の瞬間を目撃するなかで、日々の活力を与えられた人も多いのではないだろうか。そんな神がかった活躍を魅せてくれる選手にも、いずれは引退のタイミングが訪れる。そして、引退後には「セカンドキャリア」の選択が待ち受けている。多くのファンは「競技」を通じたファンであり、選手「個人」のファンではない。現役時代に知名度を培ったとしても、新しいチャレンジに還流できないことが、セカンドキャリアを考える上での課題となっていた。
そんな課題の原因を、「アスリートだけが悪いのではなく、メディアや組織を含めた構造の老朽化に依るもの」だと語る人物がいる。アメリカンフットボールのプロチーム「オービックシーガルズ」の現役選手であり、ReviveのCEOという顔を持つ前田眞郷(まえだ・しんご)だ。
前田は「“個の時代”の余波は、アスリートにも確実に広がっている」と語った上で、アスリート個人が発信する重要性を強調する。Reviveが実現しようとしている「次世代のアスリート」の姿を語ってもらった。
「競技に集中しろ」という批判を減らす社会に
前田眞郷は、ReviveのCEOを務める一方で、社会人アメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」に所属する現役アスリート。公式戦と練習、ミーティングなどを除く時間を仕事や会食に充てる、まさに「二足のわらじ」の生活を送っている。
「リーグ戦は基本的に週末。試合以外だと、試合前日の全体ミーティングや練習、週2〜3日の自主トレーニングだけで、可処分時間が週4日近くあるんです。多くの選手は競技だけでは食べていけないため、会社に勤めています」(前田)
前田自身も例に漏れず、アスリートとして活動する傍ら保険会社に勤めていた。主な仕事は、アスリートを専門とした資産管理業務。普段は関わることのできない他種目の選手と関わり、リアルな懐事情を覗くなかで、アスリートのキャリア構築に課題感を抱くようになっていった。
「さまざまなアスリートと話をするなかで感じたのは、自分自身のキャリアや価値を、“競技以外”の視点で考えられるひとが非常に少ないこと。多くのアスリートが解説者やコーチといった、競技に根ざしたセカンドキャリアを選択しています。
しかし海外を見てみると、引退後のみならず、現役中からまったく違う世界の活動を始めるアスリートは決して珍しくありません。たとえば、総合格闘技のスーパースター、コナー・マクレガー選手は、自身のウイスキーブランドを立ち上げて、1年目で年商1000億円を計上しています」(前田)