ビジネス

2020.02.13

シャネル No.5の調香師を唸らせた、香りの配信サービス

Scenteeの丹下大


新しい香りの体験を届けるために




丹下は香りを通じた新しい生活を実現するために、製品の完成度にとことんこだわった。丹下の製品開発プロセスはスペックや技術面からアプローチするのではなく、製品がどこでどう使われるのかというUXが起点になっている。

香りは実際に体験してもらえないと良さを伝える事ができない。しかし、体験したお客さんにしか製品を買ってもらえないのでは事業拡大は望めない。そのため、プロダクト自体を部屋の中心に置きたくなるようなデザインを目指した。Scentee Machinaの開発には約3年かかっているが、はじめの2年で100枚以上のデザイン画を描き続けた。

SXSWやCESにも製品のデザインモックだけで出展して来場者の反応を確かめた。もちろんモックなので香りは出ず、別の容器に入れた香りのサンプルを嗅いでもらった。香りに関してはデザイン性の高いデバイスが珍しかったため丹下の狙いが見事的中し、ホテル業界などから多くの引き合いをもらうことができた。

ものづくりの飽くなきこだわり


いよいよ本製造へ入っていったが丹下の求める製品を実現することは一筋縄ではいかなかった。Scentee Machinaの製造は中国の工場で行なっており、本体はアルミの削り出しで作っているが、表面の仕上げの質感を出すことが難しい。指紋がつかないマットな仕上がりを実現するために多くの試作を繰り返した。

また、香りが入っているガラス製のカートリッジを照らすLEDライトはろうそくと同じ色温度で、心臓の鼓動と同じリズムでゆっくりと点滅する。ライトを見つめるだけでもリラックスできるこの拘りも丹下のUX志向の現れだ。この色と動きを実現するだけでも半年かかっている。
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文・写真=入澤諒

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