アウトブレイクの予兆を捉える
まず対応まで数日間のタイムラグがあったことについて、浦島教授は「危機管理の専門家としては、発覚時点で検疫に指示を仰いで、感染拡大の措置をすぐに取るべきだと言いますが、民間の船会社の責任を問うのは少し酷でしょう」と前置きした。
一般的に、クルーズ船内では衛生管理を徹底しているが、集団感染時の対応マニュアルを策定していない場合も考えられる。しかも、今回は新型コロナウィルスの発生について誰もが予測不能だった。
だが、クルーズ船内において重大な集団感染を引き起こした事例がある、と浦島教授は指摘する。2000年9月にシドニー発のクルーズ船で、乗客約1100人のうち、310人がインフルエンザに感染した。そのうち40人が入院し、2人が死亡したケースだ。4分の1ほどが感染したことになる。
浦島教授は「インフルエンザが流行すると、飛沫感染して高齢者や持病のある人などは重症者が出やすい。アウトブレイクの予兆があった場合の対応策を考えておけば、新型ウイルスに適用できる可能性もある」と語る。
このアウトブレイクとは、一定の期間内に特定の場所で予想されるより多く感染症が発生することを指す。今回の新型コロナウィルスによる症状は違えど、潜伏期間があり、飛沫感染することから、集団感染のマニュアルがあれば、発生時点ですぐに応用すべきだろう。
人の姿が見えない「ダイヤモンド・プリンセス」船内 (@daxa_tw)
もし船内で集団感染が起きたらどうする?
それでは、船内など閉鎖された空間で集団感染が起きた場合、私たちはどうすれば良いのだろうか。感染拡大と合併症などを防ぐ、重要なポイントについて、浦島教授は以下の点を挙げた。
1. 食事の際の飛沫感染に注意する
2. 換気をして密閉空間を防ぐ
3. なるべく体を動かす
4. 水分を十分にとる
まず浦島教授は「特に食事の時はマスクができず、人と会話する機会が多いため飛沫感染しやすくなる。クルーズ船ではバイキング形式の食事もあると聞くが、ウイルスが拡大しやすいので細心の注意が必要」と語る。
また現在の「ダイヤモンド・プリンセス」の船内のように、乗客が客室内にとどまらなければいけない場合、換気が必須だ。だが、今回は窓やバルコニーがない客室もあり、2月6日にはこんな船内放送が流れた。