糖質も脂質もとりすぎ? 現代の食に足りない要素とは何か

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現代社会では、タンパク質・糖質・脂質が三大栄養素として重要視されています。しかし今、この三大栄養素について再認識をする必要があるのではないでしょうか?

タンパク質は、筋肉や骨、皮膚、臓器、毛髪、血液、酵素などを作る原料、糖質は脳や筋肉が働くためのエネルギー源、そして脂質はホルモンを生成したり、脂溶性ビタミンの吸収を促したり、体に好影響を及ぼすと言われています。

しかし、現代の(特に先進国の)食事においては、生命維持に欠かせないこれらのエネルギーは十分足りているように思います。むしろ、その過剰摂取が肥満を招いていたりします。現代病と呼ばれる生活習慣病の原因を見ても、塩分、糖分、脂質の過剰摂取が原因の一つとなっています。

となると、優先すべき栄養素を見直すと同時に、なぜ過剰摂取をしてしまうのかという原因についても考える必要があるのではないでしょうか。

そもそも、日本ではいつからこの現代栄養学に基づいて考えられているのか。それは、食糧難で栄養不足だった戦後にさかのぼります。そしてその時期に重要な役割を果たしたのが、食生活改善をすべく、厚生省の指導のもと、1956年に日本食生活協会が始めたフライパン運動です。



この運動では、「キッチンカー(栄養指導車)」が全国を駆け回り、栄養士が欧米型の料理の実演指導をして、パンケーキやスパゲティ、野菜炒め、ピラフ、カレーライス、ベーコンエッグやオムレツなど、油を使った料理を広め、200万人近い国民の栄養改善指導しました。

また、製パン技術者の講習会を開いてパン食を勧めることで、主婦が台所に立つ時間やその家事負担を減らし、女性の社会進出の一端を担ったとも言われています。

このフライパン運動の裏には、アメリカで余った農産物を発展途上国に輸出する、農業貿易促進援助法という名の小麦麦戦略の影が潜んでいますが、栄養不足であった当時の日本を救ってくれたことには違いありません。

では、それから60年以上が経ち、現代社会で不足している栄養素とはなんでしょうか?

加工技術や冷凍技術が発達し、コンビニやスーパーも普及し、さらなるテクノロジーが進化により、自宅にまで簡単に食事が届くようになったため、栄養不足とはほど遠いでしょう。代わりに減ったものは、食事を作る時間と食卓を囲む機会。それにより、料理を通して学ぶ機会も、会話をして心の栄養を育む時間も減っています。

若い世代を中心に、出会い系サイトや相席の居酒屋、一緒に作る料理教室などのような場所が流行ってるのは、孤食が増えた便利な現代社会の反動なのかもしれません。



とはいえ、この忙しい現代社会において、食事の準備に使える時間は限られています。朝昼晩を用意するとなれば、それだけでかなりの重労働です。フライパンや電子レンジなどの家電調理器、さらにはレトルトやデリバリーなどは、料理と食事のあり方を変えてくれた、現代の生活には欠かせれない便利品であることに違いありません。

ただ、ふと昔ながらの料理法に目を向けてみると、鍋に弱火をかけて食材から味を引き出す料理は、心にも熱が伝わり、内側から体を労ってくれる優しい味だというのは、みなさんご存知ではないかと思います。

そうした料理を毎日の食事に取り入れるのか、または1週間の生活の中に取り入れるのか。それは個々人の都合によるとは思いますが、寒い冬は鍋が恋しくなりますし、鍋を突きながら見つめ直してみてはいかがでしょうか?



連載:喰い改めよ!
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文=松嶋啓介

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