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現場からの医療改革


厚労省はダイヤモンド・プリンセス号の乗客および乗員合わせて3711人に検疫を行ない、症状があった120人と、彼らと濃厚接触した153人を合わせた273人から検体を採取して、ウイルス検査を行っている。

2月7日現在、171人の結果が判明し、41人の感染が判明している。船内で集団感染が起こっていることになる。ところが、乗客および乗員はひき続き船内に停留され、感染予防目的に行動を制限される。他者との接触を減らすため、自室に閉じこもることが多くなる。

ここで注意すべきは、旅行客の多くが年配の方であるということだ。ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の年齢は公表されてはいないが、幾つかの先行研究は存在する。海事プレス社の「乗船客(ボイジャーアンケート)結果」によると、このようなクルーズ船の場合、乗船者の86%が50歳代以上だった。そのうち19%は70歳代以上だ。

この世代になると、多くの人が持病を持ち、ちょっとしたストレスでも体調を崩したりする。世界中で高齢者の海外旅行は増加しており、いまは、彼らの健康をいかに守るかが旅行医学の重要なテーマとなっている。

2016年にアメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に掲載された「海外渡航前の医療上の考慮事項」という論文では、高齢者を対象にワクチンの追加接種の必要性や、基礎疾患を有する人には専門家からの助言が必要なことが述べられている。

さらに、高齢者を室内に閉じ込めることは基礎疾患を悪化させる可能性が高い。私たちは東日本大震災以降、福島県の浜通りで診療を続け、地元住民の定期的な健康診断をサポートしてきた経験から、それを実感している。

報じられないタイ人夫婦のケース


私たちのチームは、2011年5月21〜22日に飯舘村の村民を対象に健康診断を行った。564人が前年も健診を受けていたが、体重、血圧、血糖値、中性脂肪濃度は有意に上昇していた。さらに12%がPHQ-9スコアで10点以上、大うつ病の基準を満たしていた。彼らの多くは被曝を恐れ、約2カ月間、自宅に籠もっていた。

ダイヤモンド・プリンセス号の停留は14日間と聞く。同じようなことが停留中の乗客に起こってもおかしくない。しかも糖尿病など持病の悪化は新型コロナウイルス感染の増悪因子だ。

停留は船内での感染を拡げるだけでなく、高齢の乗客の健康を損ねるリスクがある。果たして、それに見合うだけのメリットはあるのだろうか。

文=上 昌広

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