ビジネス

2020.02.13

主役をなくしてみる「レス法」


それでは、この「レス法」を用いて、新しいアイデアを考えてみることにする。

案1)番付レス相撲

番付は大相撲の力士の成績のことだが、番付がもつ「序列性」を「レス」してみるとどうなるか。同地位の対戦を最初からばらしたりすることによって、普段格下のものが上位のものを倒すような誰も予想できない大番狂わせが起こることを期待してしまう。

案2)マネーレス銀行

マネーを「レス」してみるとどうなるか。イタリアには、チーズを担保に融資が受けられる銀行があるらしいが、アート作品を担保にアーティストを融資してくれたり、原盤権を担保に楽器を融資してくれたりする文化銀行があったら面白そうだ。

案3)ストリーミングレスシェア

Spotifyは、好きな曲を集めたプレイリストを全世界のユーザーにシェアできることで人気のサービスだが、シェアした本人はストリーミングできなくなったらどうだろう? CDを友達に貸す間、自分は聴けなくなるあの感覚をあえてデジタルでやってみたい。音楽、映画、ゲーム、本などの1コンテンツが1デバイスでしか再生できない仕組みにする。デジタル上に新しい図書館のようなコミュニティができるのも面白い。

以上、3つのアイデアを紹介したが、「レス法」は不在の主役を希求しながら意味や責任をそれ以外に分担することがポイントとなる。「レス法」を用いて出たアイデアを実践できれば、当たり前のように固定された概念や惰性を崩すことが、もしかしたらできるかもしれない。


上江洲佑布子◎電通Bチーム分子調理/ハープ担当。A面は電通アイソバー株式会社シニアコミュニケーションデザイナー。グラフィックデザインをバックグラウンドにさまざまな施策を立案、実施。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=上江洲佑布子 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN 2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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