ビジネス

2020.02.11

規則強化の衝撃 甘さに気づいた「復活劇」

メドレー代表取締役社長:瀧口浩平|メドレー代表取締役医師:豊田剛一郎


「豊田を迎える準備ができたぞ」

瀧口が豊田を誘ったのは14年夏だ。ジョブメドレーは軌道に乗るまで時間を要した。シードで投資したエンジェルから「瀧口君、医療は向いてないからピボットしたら」と提案されたこともあった。しかし、考えれば考えるほど、医療の課題を解決したいという思いが強くなっていく。腹をくくったとき、自然に豊田に共同代表のオファーを出していた。

豊田は当時をこう振り返る。

「共同代表は前例があまりないパターンなので迷いました。でも、非効率な医療界を患者目線で見直したいという思いは本物だった。熱烈に誘いを受けるうちに、瀧口に背中を預ける気になりました」

2人の役割は、いわゆるCEOは瀧口、主に医療界を中心とした外部との接点を豊田という分担だ。「私は起業家で、ゼロから事業を起こすのは得意。しかし、人前で話すことなど苦手なことも多い。豊田は昔からバランスのいい男なので、得意な部分で役割を分けている」(瀧口)、「サッカーでいうと1.5列目。場面によっては私が前に出ることもあります」(豊田)と、阿吽(あうん)の呼吸でフォローし合っている。
 
現在、メドレーは従来のオンライン診療に加えてオンライン予約や電子カルテなどのコンポーネントを追加して、「CLINICS」を患者と医療機関を支援するクラウド型システムへと進化させた。これが奏功して、「CLINICS」の売り上げは回復。停滞していた利用医療機関数も増え、診療報酬改定前から約1.5倍となった。

医療システム市場は約4500億円の大市場。競争は激しいが、メドレーは中核事業として成長を続けるジョブメドレー事業を擁していることが強みだ。ジョブメドレーは医療、介護、薬局、保育所などの全国65.9万事業所のうち約4分の1にあたる17.5万事業所に利用されている。同事業が生み出す利益やエンジニアなどの人的アセットを、新コンポーネント開発に積極的に投資していく予定だ。

先日、瀧口と豊田は1年半ぶりに2人で飲みに行った。「ダウンタウンの松本さんと浜田さんのような関係。仲はいいけど、いまさら外では会わない」(瀧口)という現在の関係性を考えると異例なことだ。いったい何を話したのか。そう尋ねると、「会社でのロールを外して、個の瀧口と豊田として確認したいことがあって……」(豊田)と煙に巻かれた。

取材から1週間後、メドレーは東京証券取引所から上場承認され、12月に東証マザーズへ上場予定だ。IPOを控えて、何か企んでいたのだろうか。今後もこのコンビから目を離せそうにない。


瀧口浩平◎1984年生まれ。2002年Gemeinschaft,inc.設立。09年6月メドレーを創業。代表取締役社長。

豊田剛一郎◎1984年生まれ。医師・米国医師。マッキンゼーを経て、15年2月よりメドレー代表取締役医師。

文=村上 敬 写真=マチェイ・クーチャ スタイリング=堀口和貢 ヘア&スタイリング=AKINO@Llano Hair(3rd)

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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