経済・社会

2020.02.09 07:00

自殺率の高さに危機感、「孤独の解消」に乗り出す米医療保険会社


「私たちの研究から、アメリカに住む成人の61%が孤独を訴えていることが明らかになった。孤独はしばしば、ストレスやうつ、不安、依存症と共にあることを私たちは知っている。孤独について理解を深め、その解消に努めれば、全般的な健康と精神衛生をさらに改善することができる。その実現に向けて私たちは、革新的で臨床実績のあるメンタルヘルスサービスを、顧客がより簡単・迅速・便利に利用できるようにする取り組みを優先させ、加速させている」

シグナは、単なる病気の治療という枠を超えて、「まるごとの人間」の医療ニーズに応じようとしている。ほかの医療保険会社も、孤独を解消するためのプログラムに着手したり、社会的決定要因(健康状態に違いをもたらす経済的・社会的状況のこと)への取り組みに乗り出したりしている。

たとえば、CVSヘルス傘下のエトナは、高齢者と介護職に就く大学生をマッチングするマイアミ州の企業「Papa Inc.」と提携し、メディケア・アドバンテージ・プランに加入している高齢者を対象にしたプログラムを開始した。

Papa Inc.の創業者で最高経営責任者(CEO)であるアンドルー・パーカー(Andrew Parker)は、「孤独の広がりは、健康に計り知れない影響を及ぼす」と話す。「孤独にとらわれると、早死にする可能性が29%以上も高くなるうえに、ほかの有害な問題も多く伴う。孤独を感じているメンバーを、介護コンパニオンと結びつけることで、われわれは社会的な交流を改善させ、メンバーに対して『信頼できるオンデマンドの家族』を提供することができる。日々の暮らしや精神的姿勢を改善させることができるのだ」

コモンウェルス財団による自殺に関する報告書をまとめた著者たちは、医療保険会社が実施しているそうした取り組みについて、「重要な」ステップと呼んでいる。

コモンウェルス財団の研究者で、報告書の筆頭著者であるローザ・ティッカネン(Roosa Tikkanen)は、「アメリカの医療保険会社は、社会からの孤立や孤独の改善策に取り組み始めている。孤立や孤独が健康に影響を及ぼすことに気がついたからだ」と述べた。「これは患者にとって、とりわけ重い病気にかかっている患者や脆弱な患者にとって、重要な一歩だ。大切なのは、社会的孤立の解消を目指した医療保険会社の取り組みを、健康改善のためのほかの社会政策とともに並行して実施することだ」

翻訳=ガリレオ

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