自殺率の高さに危機感、「孤独の解消」に乗り出す米医療保険会社

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アメリカの自殺率の高さが、医療保険会社を奮起させるかもしれない。こうした会社は現在、孤独を軽減させる取り組みや、体調不良や病気につながりかねない他の社会的な決定要因について対策を講じる取り組みを推し進めようとしている。

医療制度の向上を目指す「コモンウェルス財団(Commonwealth Fund)」が2020年1月30日に公表した新たな報告書から、アメリカは「富裕国のなかで自殺率が最も高い」ことが明らかになった。この報告書によれば、アメリカでは10万人に14人が自殺している。これはイギリスの自殺率の2倍だという。

報告書では、経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで「収入が高い」10カ国とアメリカが比較されている(比較対象国はイギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、スイス、ニュージーランド、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、フランスで、日本を含むアジアの国は含まれていない)。

自殺率が高い一方で、アメリカは他の富裕国に比べて、1人あたりの医療費がはるかに高い。これは、アメリカには「もっと良いやり方ができる」ことを示している、と語るのは、コモンウェルス財団プレジデントのデイビッド・ブルメンタル(David Blumenthal)だ。「すべての人が、必要とする医療を、必要なときに受けられることを約束するところから始めなくてはならない」

この報告書「U.S. Health Care from a Global Perspective, 2019: Higher Spending, Worse Outcomes(世界的視野から見たアメリカのヘルスケア2019年:高い医療費、低い成果)」を作成した著者たちが、人々の自殺を減らすために提案しているのは、適切な場所とタイミングで適切な医療を受けられるようにするため、「ペイ・フォー・パフォーマンス」モデル(良い治療成果を上げた医師に対して金銭的インセンティブを与えること)やその他のインセンティブ・システムを実現させることだ。

複数の医療保険会社が、自らの責任を果たすために、食料不足やホームレス問題、孤独や孤立など、健康に影響するさまざまな社会的要因に対処しようとしていると主張している。医療保険会社のアンセム(Anthem)や、ドラッグストア大手CVSヘルス(CVS Health)傘下のエトナ(Aetna)、シグナ(Cigna)、ヒューマナ(Humana)、ユナイテッドヘルス・グループ(UnitedHealth Group)などの大手では、従来であればカバーしていなかったメンタルヘルスと公共サービスへの給付支払いがますます増えている。

シグナが2020年1月に発表した分析研究では、成人の61%が孤独感を訴えていることが明らかになった。コモンウェルス財団の報告書を作成した著者たちは、仕事と孤独のあいだには「明らかな関係性」があると指摘しているが、それを裏づけたかたちだ。

シグナの最高医務責任者(CMO)であり、行動保険学を担当するダグ・ネメセック博士(Dr. Doug Nemecek)は、「アメリカは、これまで見られなかったようなメンタルヘルスの危機に直面しており、その影響は社会や家庭、職場で日常的に目にできる」と述べた。
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翻訳=ガリレオ

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