手術。体感時間1分。甘かった…|乳がんという「転機」#8

北風祐子さん(写真=小田駿一)


そう簡単に死んでたまるか


そう、こうなってみるとわかるけど、私たちはそう簡単には死なない。そう簡単に死んでたまるか。ふざけんな。だから、もし周りにがんの人がいたら、いたずらにショックを受けないで、本人の生きるパワーと、医学の進歩と、祈りの力を信じて、気をしっかりもって支えてあげてほしい。

ふと、娘のことが頭をよぎった。手術する前に、数々の精密検査を受け続けて、少し落ち着いてきたころ、私は娘に「今回は心配かけてごめんね」と言った。

すると娘は、「ママはいつも通り憎たらしくて元気だったから、大丈夫だと思っていたよ。ママっていかにもがんにならなそうなのにねー」と答えた。私の生きる力を、自分よりも娘のほうが信じてくれていた。

ケンちゃんは、小さい頃こそお互いの家に遊びに行ったりしたが、その後は一度どこかで偶然会ったきりで、ごくたまに母親や共通の友人経由で様子を聞くくらいの関係だった。それなのに、術後1日目の、まだ顔も頭も洗ってないヨレヨレ姿をさらけだしても、なぜか平気だった。同じ病院で闘病する同志だからかもしれない。

Beautiful moon

東京 乳がん

I love Tokyo.
My breast cancer surgery was over safely.


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連載「乳がんという『転機』」。筆者は電通 チーフ・ソリューション・ディレクターでForbes JAPANオフィシャルコラムニストの北風祐子さん。

初動から立ち直るまでのブログ的記録。11人に1人が乳がんになる時代、大親友がたまたま医師だったおかげで筆者が知ることができたポイントを、乳がんの不安のある女性たちやその家族に広く共有し、お役に立てていただけたらと考えています。

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文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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