ニューヨークにあるロチェスター大学医療センターのベンジャミン・チャップマン(Benjamin Chapman)と、ワシントンD.C.にあるアメリカン・インスティテュート・フォー・リサーチ(American Institutes for Research)のスーザン・ラファム(Susan Lapham)を中心とする研究チームによれば、「活発さ」「穏やかさ」「成熟度」など、適応力の高さを示す性格項目の評価が10代のころに高かった人は、70歳までに認知症になる割合が低かったという(「活発さ」は、元気さ、エネルギー、全般的な活動性として評価された)。この研究は、2019年10月に「JAMAサイコロジー(JAMA Psychology)」誌で発表された。
8万2232人を対象としたコホート研究で得られたこの結果は、認知症の病理学的特徴が存在するとは考えにくい青年期の性格が、「数十年後に発症する認知症」に関連する一因子であることを示している。「穏やかで成熟した若者は、認知症になる割合が低かった。こうした”リスクの低さ”は、社会経済的な階層が高い人ほど顕著だった」と研究チームは書いている。
適応力の高さを表す性格が、どのように認知症を防いでいるのだろうか。その仕組みは明らかになっていない。ただし、この研究の知見では、発症の数十年前に表れていた非適応的な性格が、「70歳までの認知症発症」の独立したリスク因子となる可能性も示唆されている。
研究者らによれば、より年齢の高い成人を対象とした研究でも、性格とその後の認知症発症との関連性が示されているという。また、神経症的傾向、衝動性、良心の欠如といった好ましくない性格は、認知症と診断される何年も前から表れることがあり、病気の進行に伴ってそうした傾向が強まるケースもあるという。
とはいえ、神経症的傾向が強く、良心レベルが低いという特徴は、認知症発症前や発症後に見られる性格崩壊パターンと一致するため、性格の変化や歪みが、認知症に起因するものなのか、それとも認知症の独立リスク因子なのかを判断するのは難しい。
青年期におけるボディマス指数(BMI)の高さも、認知症リスクの高さに関連しているが、「活発さと認知症との関連」を説明できる要因ではないと研究チームは指摘している。BMIは身体活性を示すデータとして不完全なものであり、また今回の研究で用いられた「活発さを測る項目」のなかには、身体的な活性の枠を超えて、人生の目的や社会貢献などの特性に触れたものもある。社会経済的な階層もまた、活発さを高めるわけではなかった。
研究チームの指摘によれば、神経症的傾向の強さや良心レベルの低さに関係する性格が青年期に見られた人は、認知症リスクの高い生活を送る傾向があり、その後、認知症になった際に、認知症状の発症と連動して、神経症的傾向が強くなったり、良心が低下したりする可能性があるという。