ビジネス

2020.02.08

日本発、世界に向けて仕掛ける「スポーツ業界」の変革──テクノロジーを取り入れ、市場を拡大せよ

「SPORTS TECH TOKYO」デモデイの様子


スポーツ、テック、ビジネスが出会うプラットフォーム


例えば、ファイナリストに選ばれたPixellot、イスラエルを拠点とし、”スポーツコンテンツのプロダクションを民主化する”をかけ声に、スタジアムに設置したカメラにより試合映像の撮影と編集を自動生成するソリューションを開発した。

「放映されないスポーツイベントは2億件以上」という同社、まだまだコンテンツという宝はたくさんあるのだ。SPORTS TECH TOKYOでの収穫は、日本市場におけるブランディング戦略など電通の支援だ。ファイナリストとなったあとはESPNとの提携も発表、大学スポーツの試合でPixellotの技術が利用されることになっている。

同じくファイナリストのMisapplied Sciences(米)は、単一の画面だが見る人の角度により異なる映像を出し分ける独自のディスプレイ技術「Parallel Reality」を開発した。スクラムベンチャーズが投資を決定したが、同じく同社に出資するDelta Airlinesは1月、米ラスベガスの「CES 2020」での基調講演でCEO自らがMisapplied Sciencesの技術を紹介し、注目を集めた。

フィンランドのOmegawaveは頭部や腹部に装置をつけて心拍数、脳波などのデータを収集・分析し、コンディションに合わせたトレーニングを提案するソリューションを持つが、SPORTS TECH TOKYOを通じて日本トライアスロン連盟、それにいくつかのプロチームでの導入が決定した。同社CEOのGerard Bruenは、「電通のおかげで適切なキーパーソンと話ができた」と満足顔で語った。

パーティシパントのPlayerMakerは、スパイクに装着したセンサーからのデータを収集する技術を提供するイギリス企業だ。2020年に入り1000万ドルの投資を受けることを発表、続けてアルゼンチンのオリンピックサッカーチーム(U23)に採用されたことも明らかにしている。

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スパイクに装着したセンサーからのデータを収集する技術を提供するPlayerMaker

日本企業同士の出会いもある。「海外では弁護士がスポーツビジネスそのものに携わっている。日本でこの分野を開拓したい」という西村あさひ法律事務所の弁護士、稲垣弘則氏は、弁護士としてスポーツビジネス分野の拡大を図るべくSPORTS TECH TOKYOに参画した。メンターとして、参加するベンチャー企業にアドバイスをする。

その一方で、SPORTS TECH TOKYOのキックオフミーティングでチケット売買仲介サービスのチケットストリートのトップと出会ったことをきっかけに、稲垣氏の出向先であるパシフィックリーグマーケティング(PLM)を通じてパ・リーグ3球団とのパートナーシップが実現した。「これまで法律が十分に介入していなかったチケット二次流通市場だが、2019年6月に施行されたチケット不正転売禁止法により、合法にできることとできないことが明確になった。チケットストリートがパ・リーグ3球団の公認のリセールサービスとなることで市場の啓蒙と拡大を図りたい」と語る。
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文・写真=末岡洋子

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