ビジネス

2020.02.08

日本発、世界に向けて仕掛ける「スポーツ業界」の変革──テクノロジーを取り入れ、市場を拡大せよ

「SPORTS TECH TOKYO」デモデイの様子

日本中が歓喜したラグビーワールドカップの余韻が残る中、いよいよオリンピックイヤーとなった。競技としてのスポーツの盛り上がりだけでなく、スポーツとテクノロジーの組み合わせでスポーツビジネス市場の拡大を狙うプログラムがある──SPORTS TECH TOKYOだ。

スポーツ、テック、そしてビジネスを共通言語に、国外の企業と日本企業の協業や提携が始まっているという。

データ分析、ヘルスケア、エンタメ──スポーツの射程が広がってきた


SPORTS TECH TOKYOは、電通と米サンフランシスコを拠点とするベンチャーキャピタルのスクラムベンチャーズが組み、2018年にスタートしたアクセラレータープログラムだ。

ファンエンゲージメント、スタジアム体験、アスリートのパフォーマンスと大きく3つのカテゴリを用意し、世界中からスタートアップを募ったところ、300社を超える応募があった。その中から約160社をパーティシパントとして選び、さらにファイナリストとして12社に絞り込んだ。ファイナリストはメンターからアドバイスを受けたり、投資や提携、ネットワーク構築の機会が得られる。

電通とスポーツといえば、オリンピックやFIFAワールドカップといったビックイベントでの放映権、マーケティングなどが浮かぶ。東京オリンピック・パラリンピックでも、マーケティング専任代理店に指名されている。だが、SPORTS TECH TOKYOはスポーツビジネス育成プログラムであり、プログラムオーナーを務める中嶋文彦は事業開発を専門としてきた人物だ。そこからもわかるように、電通にとってSPORTS TECH TOKYOは、長期的視野に立った新しい事業開発の一環といえる。

SPORTS TECH TOKYOの狙いについて、中嶋は次のように語る。

「スポーツの射程が広がってきた。体のコンディションを整えることはヘルスケアにつながっていくし、データをどう活用するかはアナリティクスにつながる。スポーツはライブのエンターテインメントそのもので、エンターテインメントにも拡大できる」

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電通の中嶋文彦氏(左)とスクラムベンチャーズの宮田拓弥(右)

そこに、自社一社ではなく様々な企業が組んで新しいイノベーションを探る「オープンイノベーション」のトレンドを組み合わせることができる、という見立てだ。あらゆる産業がなんらかの形でITやデジタル化の影響を受ける中、スポーツも例外ではない。

「スポーツにテクノロジーが入り始めており、間口も奥行きも広くなっている。様々な産業に適用できる」

そこで、巨大なスポーツビジネス市場が広がる米国のスクラムベンチャーズと組んだ。電通が用意するスポーツ分野のイノベーションプラットフォームということもあり、SPORTS TECH TOKYOに関心を示す企業は多い。プラチナスポンサーには伊藤忠、ゴールドパートナーにはソフトバンク、ソニー・ミュージックエンタテインメント、日本マイクロソフト、CBCなどが名を連ねる。このほかスポンサーとして、日本ラグビーフットボール協会などのスポーツ団体、横浜マリノスなどのチーム、メディアやベンチャーキャピタルなど様々な企業や団体が参加している。

共通しているのは「スポーツを入り口に、価値あるビジネスを創造する」という思いだ。そして、これらスポンサー企業やチームがスタートアップと組んで新しい事業を生み出すプラットフォームとしての役割は、すでに機能し始めている。
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文・写真=末岡洋子

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