スウェーデンから学ぶ「共創イノベーション」の生み出し方

ストックホルムにあるEpicenter(Användning i media)

北欧の大国、スウェーデンでは、社会課題を解決するようなイノベーションが着実に生まれている。その実態を調査しに現地に行くと、イノベーションの創出に成功している組織の共通項が見えてきた。それは、「スーパーコネクター」と呼ばれる存在だ。

スーパーコネクターとは、多様なバックグラウンドを持ち合わせるプロジェクトメンバーの中に入り、共通のゴールを目指し、プロジェクト全体をファシリテーションする人たちのこと。ここで重要なのは、彼らは自身が必ずしもプロジェクトオーナーではなく、組織外からやってきていることが多いとうことだ。

実際、産業技術総合研究所の人材育成事業「産総研デザインスクール」と博報堂の専門組織「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」が現地で行ったリサーチでは、元大学教員や研究者、起業家、またフリーランスでイノベーション創出を支援する人など、様々なバックグラウンドを持つスーパーコネクターに出会った。

たとえば第1回で紹介したNorrskenでは、人員の10%をコミュニティマネージャーという名のスーパーコネクターで構成している。また、第3回で取り上げたEpicenterでは、大学の研究者や起業家などのスーパーコネクターにメンバーシップを付与して自由に出入りできる仕組みにしていた。

プロジェクトを最短でゴールに向かわせる


これだけを書くと一見、事業やプロジェクトの顧問となる有識者のような存在に思われてしまうかもしれないが、彼らの存在はそれとは全く違う。

彼らがスーパーコネクターと呼ばれる所以は、自身の専門性や知見を提供するだけでなく、人と人、組織と組織をつなぐことにより、プロジェクトを最短でゴールに向かわせるところにある。プロジェクトに、「スピード」と「視点」を与えてくれるのだ。彼らはアドバイザーでもスーパーバイザーでもなく、自身が“エンジン”となり、プロジェクトを推進するファシリテーションを行う。

実際に私たちがスウェーデンで調査を行った際も、スーパーコネクターのBert-Olaがいてくれたことで、調査の質が圧倒的に上がった。例えば、Epicenterでは、彼の人脈を活かして創業者のOla Ahlvarssonとつないでくれたし、私たちが興味を持ちそうな人を紹介してくれ、急遽翌日話を聞けるようなこともあった。

その組織に何が足りないかを判断しつつ、すぐにヒントとなる人物と繋がっていく。この動きこそが、スウェーデンのイノベーティブな組織やスタートアップを成功に導いている。



Bert-Ola自身、スーパーコネクターの役割を「正規ルートの100倍早く仕事を進め、100倍早く結果に結び付けること」だと話す。日本と同様、スウェーデンも、正規ルートで話を進めようとするとしがらみが邪魔をして会いたい人に会えなかったり、プロジェクトが進みづらいこともあるが、業界に精通したスーパーコネクターがいれば、電話一本で翌日アポも可能なのだ。

その“繋げる”力はどう培われているのか。Bert-Olaは自らを、「情報を自分から掴み取っていく姿勢も忘れません。いいと思う本があれば、僕は本を読む前にすぐ著者に会いに行きます。その方が、著者がリアルタイムで考えている話が聞けるし、興味のある人をその場で引き合わせられますし」と語る。

文=多々納有希

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