ビジネス

2020.02.07

「儲からないから、すぐ撤退」では新しい市場は創れない|JapanTaxi 川鍋一朗

JapanTaxi代表取締役社長の川鍋一朗氏




覚悟を持って先陣を切る


──事業参入タイミングの見極めについて、何か工夫されていることはありますか?

まず「やってみる」こと。事業参入のタイミングは考えているだけではわかりません。一度始めれば、そのタイミングが適切かどうかの見極めは数カ月でできます。

例えばIRIS(JapanTaxiと株式会社フリークアウトの合弁会社として2016年設立)でやっているタクシー車内広告事業は開始してすぐに手応えを感じ、この2年くらいで急激に事業として立ち上がりました。

成功の背景には、通信速度の高速化やタブレット・SIMの低価格化など、テレビクオリティの動画広告が容易に出稿できる外的環境が整ったことが考えられます。しかし、このタイミングは我々が意図したものではなく、やってみて初めてわかったことです。

また、もし「参入が早すぎた」と気づいた場合でも、本当に将来的な可能性や社会的意義があるのであれば、損が出ない程度の小さな体制で継続することも大切です。

タクシー車内広告の取り組みは、私たちは以前から長年試行錯誤し続けていました。その蓄積があったからこそ、ここ2、3年の市場成長タイミングに乗ることができたのです。同様に、子供一人でも安心してタクシーに乗せられる「キッズタクシー」は、事業規模は小さくても社会的意義がある事業なので8年続けています。

ネット企業は「儲からないからすぐに撤退して次」とピボットすることが美徳とされている節がありますが、その繰り返しでは新しい市場を創ることはできません。

市場がいつ立ち上がるかなんて誰にもわからない中で先陣を切るためには、とにかく考える前に「やってみる」こと。そしてタイミングが来るまで粘り強く続ける「覚悟」が求められます。

──御社はタクシー配車サービスもかなり前から提供されています。

配車アプリ「JapanTaxi」は2011年から8年続けていますので、どの競合よりも先に参入しています。早く参入して時間を使えたことが、現在の競合優位性につながっています。

最初の頃は誰も見向きもしないし、儲からない状況が続くかもしれません。

そんな状況を乗り越え、タイミングが来るまで辛抱強く続ける「覚悟」が、市場の先陣を切る会社には必要だと思います。

連載:起業家たちの「頭の中」
過去記事はこちら>>

文=堀田慶介 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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