ビジネス

2020.02.06

「ギャル」に目をつけた共感マーケの先駆者が語る、これからのエンタメに必要な視点

TWIN PLANET代表取締役 矢嶋健二


ギャルの市場を「つくる」挑戦


しかし、市民権を得ていなかったギャルの市場を作ったとしても、サブカルチャーの一種としてミニマルな市場で終わってしまう可能性もあっただろう。矢嶋は、なぜギャルを「若者トレンドの発信源」として大衆の認知を得ることに成功したのだろうか。

「確かに最初は、かわいいギャルをテレビに出しても正統派の女子高生の脇役にしかなれず、歯痒い思いをしていました。女子高生に“可愛い”で勝負しても勝ち目がない。何か別のポジションで勝負を仕掛ける必要があると考えたときに突破口となったのが、所属していた小森純でした。彼女は当時から、モデルにも関わらず彼氏やお金の話をぶっちゃけてしまう特殊なキャラクターでした。このキャラクターでポジションを獲得することができれば、ギャルでも主役になれるのではないかと考えたんです」

矢嶋の仮説は当たった。小森純は自由奔放なキャラクターとしてバラエティ番組を中心に活躍。露出が増えるなかでギャルの性格やライフスタイルが大衆に理解されていき、市場は一気に拡大していった。また、ギャルに加え「読者モデル」という存在が広く認知されたのも、小森純がきっかけとなった。

「テレビの露出が増えても、単にモデルとして売り出していっては、同世代に自分ごととして捉えてもらえない可能性があった。そこで、読者モデルという視聴者に近い立場を打ち出すことで、『私も純ちゃんみたいになれるかもしれない』と共感を呼ぶことができると考えたんです。小森純の等身大なキャラクターも相まって、多くの女子高生の共感を得ることができましたね」

タレントの等身大の姿を見せ、共感を招き、消費を促進し、市場を形成する。SNSが普及した現代におけるマーケティング戦略を、10年以上前から行なっていたのがツインプラネットであり、矢嶋健二なのだ。

共感マーケが「主流」になっても、やることは変わらない


矢嶋は、SNSが普及し共感マーケがトレンドとなっている現代のマーケティング業界を「僕らにとってはかなり有利なものになった」と語る。それでも、ギャルを仕掛けていたころとやるべきことは変わらない。

「インスタグラムやYouTube、TikTok……。発信のチャネルは増えましたが、誰に届けるべきなのかを考え、ターゲットに沿ったタレントをアサインし、プロモーションを仕掛けていく。弊社には『ギャル』を仕掛けた確固たる成功体験があるので、『トレンドだから』という理由で血迷った施策を打つことはありません」


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文=半蔵門太郎 写真=小田駿一

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