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数々の受賞歴をもつ、国際的なデザインコンサルティング会社

IDEO Tokyo オフィスにて

「何から始めたらいいのかわからない」「そもそもアイデアが出てこない」──新しい企画を立てるとき、新規事業をデザインするときなどに、最も多くの人が直面する悩みだ。

この状況を打開するためのヒントについて、IDEO Tokyoのディレクター岩下恵がビジネスデザイナーの観点からお伝えする。前編では、新たなアイデアを発想し、拡げるコツを、後編では、アイデアを収束し、形にしていく方法を、それぞれツールを踏まえて紹介したい。

1. まずは本質的な目的を意識する


“ここはX年後の未来。あなたの新規事業は大成功し、CEOであるあなたと会社が、雑誌の表紙を飾ることになりました。さぁ、それはどの雑誌? そして表紙に載ったのは、どんな写真/イラストとヘッドライン? 白紙に描いてみましょう”

ご存知の方もいるかもしれないが、これは「マガジン・カバー・アクティビティ」と呼ばれるツールだ。IDEOでもプロジェクト初日にクライアントにやってもらうことがある。

このエクササイズの意義は、新規事業創出の本質的な目的について考え、腹落ちさせる機会をつくることだ。数字的なKPIの話ではなく、社会にどんなインパクトを与えたいのか? 自分たちは何をもって有名になりたいか? など、こうした本質的な問いに答えることで、主体的で広がりのある事業目標が見えてくるからだ。

日本の多くのクライアントは、さまざまな恐れを抱えてIDEOを訪れる。市場の縮小、破壊的なベンチャーに淘汰されるリスク、経営層からの「何か新しいことをやれ」という重圧。その結果、「◯年後に売上XX円達成」や「◯◯業界におけるリーディングカンパニーになる」のような、ぼんやりした成功基準しか出てこないことがよくある。

IDEOでこのツールを使い、良いスタートを切った事例の一つに、三井物産グループの「Moon Creative Lab」がある。従来の商社の枠組を超え、新たなビジネスをゼロイチで創造するために2018年に独立した組織として立ち上がったイノベーションハブだ。チームメンバーは真っ白な紙に、現CEOがカジュアルなTシャツ(スーツではなく!)を着ている姿を描き、「事業の創り方を変える − 変革の舞台裏」とタイトルをつけた。

三井物産グループの「Moon Creative Lab」

このエクササイズの後、この事業の最大の目的は“変化の標”になることだと確信し、生まれたベンチャーの数だけではなく、社員のエンゲージメントや、社内外でこのラボがどう語られるかを、成功の尺度とすることにした。

2. 「実現できるのか?」にとらわれない


ブレストにブレストを重ねても、同じようなアイデアしか出てこない。もっと良いアイデアを出したくて仕方ないのに、頭の片隅で「そんなの無理だ」という声が聞こえてしまう……。特に、事業に長く携わっているベテラン社員ほど、知識のせいでバイアスがかかり、業界や組織の慣習に縛られてしまう。

IDEOでは、「最高のアイデアは、一見くだらなく見えるようなことから生まれたりする」と信じている。クライアントにもこうしたマインドセットの大切さを知ってもらうために、私たちは「デザイン・フィクション」というツールを使う。文字通り、今ある制約や慣習は一切存在しないフィクションの世界を想定して、デザインするというものだ。

文=岩下恵(IDEO Tokyo デザインディレクター)

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