なぜ志摩半島の老舗ホテルにはインバウンドの観光客が少ないのか


確かに、サミットの開催は、三重県にとって大きな経済効果となったであろうが、いかに魅力的な観光地としての「物語」を創造できていたか、それについてのソフト的効果の検証には、かなり疑問が残る。

その場所にある伝統、歴史、文化、そして何ものにも代え難い景観環境という「地域の宝もの」を、国内外に向けて、オーバーツーリズムにならない、サステナブル・ツーリズムとしての観光地をめざすといった視点とともに、現実的で継続的なプロモーションが、果たしてできていたのだろうか?



一方的な観光プロモーションは無意味


将来、どんなに海外セレブが訪れるホテルや観光地となったとしても、本来の日本らしいおもてなし哲学や姿勢を失わないでいられるようにするために、今後、どのようにこの地域やホテルをアピールしていけばよいのだろうか。

そのためには、プロモーション手法の大幅な見直しなど、すべきことは多々ある。そんななかでも、こういった日本の大切な地域の魅力を世界に向けて発信し、観光商品として販売するためには、その魅力の「本物さ」や「変わらなさ」を理解し、丁寧にプロモートしてくれる世界各国のランドオペレーターや旅行会社、メディア、インフルエンサーなどと、直接、繋がる必要があると私は思う。

そして、そういった人たちに、まずは日本国内の現地で、量より質的な、経済効果の大きな数字だけでは語れない「地域の本物の魅力」を実体験してもらうことだ。

要するに、もはや海外に出ていって、こちらの魅力を一方的に観光プロモーションするだけの時代ではないということ。現場は、世界を飛び回るだけでなく、まさに、いま、ここ、日本にもあるのだ。

そんななか、日本と太平洋の島嶼国や地域が環境問題などを話し合う第9回「太平洋・島サミット」(2021年)の開催地に、この地域が選ばれたというニュースが飛び込んできた。

地元の志摩市の竹内市長は「伊勢志摩サミットから5年後の開催で、地域活性化に期待が持てる」と歓迎しているとのことだが、果たして、どのような成果となるか、期待を込めて見つめていきたいと思う。

最後にもうひとつ。今回、この老舗ホテルのレストランで味わった、あわびの概念を一新するような「あわびのポワレ」と「海の幸カレー」は、本当に、本当に美味しかった! レストランの窓越しに広がる眩く光る英虞湾を望むかけがえのない景色とともに、友人ともども存分に堪能したということを付け加えておきたい。

連載 : Enjoy the GAP! -日本を世界に伝える旅
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文=古田菜穂子

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