ロシアが導入する国民監視ツール「FindFace」が米国進出の可能性

Andrey_Popov / Shutterstock.com

ロシアの首都モスクワで、監視カメラを何万台も設置し、地球上で最も先進的な顔認証システムを導入する巨大監視プロジェクトが静かに立ち上がろうとしている。

顔認識に用いられるソフトウェアは、NtechLabが開発した「FindFace」だ。一部のレポートは、FindFaceを「匿名性に終焉をもたらすアプリ」と評している。2010年代半ばに開発されたFindFaceは、写真に写った顔を分析し、ロシア最大のSNS「フコンタクテ(Vkontakte)」上でその人物の身元を特定できるアプリだ。

その後、NtechLabは消費者向けアプリを閉鎖し、現在は政府の監視活動を支援している。ロシアのメディアは1月28日、モスクワ市が同社に対して監視システムの構築費として320万ドルを支払ったと報じた。

NtechLabのCEO、Alex Mininはフォーブスに対し、「モスクワのプロジェクトは、リアルタイムの顔認識システム構築では世界最大規模だ」と話した。リアルタイムの顔認識システムは群衆の中から顔を抽出し、警察の犯罪者データベースと一致するか瞬時に判断するものだ。

ロンドン警視庁も、日本のNECと組んで同様のシステムを開発中だ。従来のシステムでは、録画した映像から顔認証を行うため、長い時間が必要だった。

顔認識システムは常に人々の顔をスキャンするため、プライバシーの侵害が問題視されている。特に、プーチン政権下のロシアでは人権侵害が横行しており、モスクワのプロジェクトを懸念する声が上がっている。昨年、ロシア人の女性人権活動家であるAlyona Popovaは、このプロジェクトがプライバシーを侵害しているとしてモスクワ市政府を提訴したが、訴えはすぐに却下された。

Mininによると、NtechLabは過去2年間に渡ってこのプロジェクトに取り組み、システムを完成させたという。「数十万台の監視カメラを使い、リアルタイムで顔認識を行うことができる」と彼は誇らしげに語った。
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編集=上田裕資

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