顔認識に用いられるソフトウェアは、NtechLabが開発した「FindFace」だ。一部のレポートは、FindFaceを「匿名性に終焉をもたらすアプリ」と評している。2010年代半ばに開発されたFindFaceは、写真に写った顔を分析し、ロシア最大のSNS「フコンタクテ(Vkontakte)」上でその人物の身元を特定できるアプリだ。
その後、NtechLabは消費者向けアプリを閉鎖し、現在は政府の監視活動を支援している。ロシアのメディアは1月28日、モスクワ市が同社に対して監視システムの構築費として320万ドルを支払ったと報じた。
NtechLabのCEO、Alex Mininはフォーブスに対し、「モスクワのプロジェクトは、リアルタイムの顔認識システム構築では世界最大規模だ」と話した。リアルタイムの顔認識システムは群衆の中から顔を抽出し、警察の犯罪者データベースと一致するか瞬時に判断するものだ。
ロンドン警視庁も、日本のNECと組んで同様のシステムを開発中だ。従来のシステムでは、録画した映像から顔認証を行うため、長い時間が必要だった。
顔認識システムは常に人々の顔をスキャンするため、プライバシーの侵害が問題視されている。特に、プーチン政権下のロシアでは人権侵害が横行しており、モスクワのプロジェクトを懸念する声が上がっている。昨年、ロシア人の女性人権活動家であるAlyona Popovaは、このプロジェクトがプライバシーを侵害しているとしてモスクワ市政府を提訴したが、訴えはすぐに却下された。
Mininによると、NtechLabは過去2年間に渡ってこのプロジェクトに取り組み、システムを完成させたという。「数十万台の監視カメラを使い、リアルタイムで顔認識を行うことができる」と彼は誇らしげに語った。