【独占】エイベックス黒岩克巳社長、逆風と勝算「それでも、コンテンツメーカーであり続ける」

エイベックスの黒岩克巳代表(写真=小田駿一)

人々の可処分時間とディスプレイの奪い合い。映画、テレビ、ラジオ、音楽、雑誌、本、ニュース、日記、つぶやき。あらゆるコンテンツがネットとスマホの世界にやってきた。いま、人々はコンテンツ過多に陥っている。アップル、アマゾン、ヤフー、LINE…。ネットワーク上のコンテンツの流通と価格決定を主に担うのはプラットフォーマーである。

翻って、コンテンツメーカーには逆風が吹いていると言えるのではないか。

例えば音楽業界。アップルがiPodとiTunesで起こした音楽ビジネスへのストリーミング革命で、主戦場は一気にストリーミングサービスへシフトした。アップルミュージックやスポティファイなどプラットフォーマーが力を握る。コンテンツメーカーはどのように向き合うか。

90年代にミリオンを連発したトップアーティストを多数生み出し、CD売上中心の音楽ビジネスで一世を風靡したエイベックス。今年、創業32周年を迎えるエイベックスが国内におけるCDビジネスの縮小から生き残ることができたひとつの大きな柱として、早くから「ライブ」に着目し注力してきたことにある。

ライブ戦略をリードしてきたのは、2018年5月に松浦勝人現会長から社長を引き継いだ黒岩克巳代表取締役社長最高執行責任者(COO)だ。

黒岩社長は今後のエンタメ業界をどのように見て、どのような戦略を描いているのだろうか。話を聞いたところ、「コンテンツメーカーであり続けることは変えない」との一言があった。プラットフォーマー全盛時代に、コンテンツメーカーとして戦い続ける理由とは──。



社長就任以降1年半、正直に言うと、次のヒットを作るところまではいっていません。ただ、エイベックスとしてはやはりコンテンツ、IP(intellectual property、知的財産)がど真ん中にある会社にしていこうと進めています。

コンテンツの流通を考えるとプラットフォーマーは強いですが、やはりヒット商品、ヒットコンテンツがあることによって、プラットフォーム側ともいい関係値をつくることができるのです。ヒット曲、ヒットアーティストがいるから、プラットフォーム側と対等にいろんな取り組みができる。僕たちがど真ん中に置いていかなきゃいけないのは、やはりIPづくりなのだと掲げています。

もちろん約30年の歴史の中で数々のヒットを出してきた会社なので、それらを財産として活用しながらやっておりますが、やはり企業として新しいものを作っていかなければいけない。新しいスター、新しいコンテンツを作っていかなきゃいけない。これは急務です。社長就任後の1年半は、次の新しいものを作る体制づくりをしてきました。

まだ結果は出せていません。来るべきときに向けて、いま、耕して種をまいているところですね。今後は、グローバルの感覚でテクノロジーを活用したIPやエンターテインメントを様々なジャンルで生み出していきたいと思います。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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