【独占】エイベックス黒岩克巳社長、逆風と勝算「それでも、コンテンツメーカーであり続ける」

エイベックスの黒岩克巳代表(写真=小田駿一)


新規事業、需要が生まれてなんぼ


新規事業というといろんなアイデアが出てきますが、やはり世の中にないものを形にしたとしても「なくていいじゃん」というものも世の中にいっぱいあると思うんです。最後はお客様が必要としているかどうかというところで、需要と供給がマッチして初めて新規事業になり得ると思います。でも、ほとんどが、「結局、なくてもいいじゃん」で終わっていないか。

僕も数多く経験していますので、世の中にないものを生み出して、そこにしっかり需要が生まれて成長していく瞬間が来るかどうかが、成功の分岐点ですね。やはり成長しないとお金が生まれない、お金が生まれないと続けられないので。

トライしたことで満足しちゃうことも多いと思うんですよね。「ナイストライ」と。3年後に単黒を目指す、という話はよく聞きますが、3年経ったときに「あともう1年」となって、もう1年たったときに最終的にうまくいかなかったと。たぶん日本の会社は内部留保があって、ある程度余裕があるのでそういうことをやっていますが、確率を上げていかないとまずいんじゃないかと、うちの会社も含めて感じてはいます。

エイベックスのアイデンティティ


正直、コンテンツで勝負をしていくのはギャンブル性が高いですが、会長の松浦との間でも、コンテンツやIPで勝負していくのがエイベックスのアイデンティティであると一致しています。やはりコンテンツで当てないと、世の中の信頼や社員のモチベーションを勝ち取れないので、やるしかないです。

プラットフォーマーはプラットフォーマーの強みがある一方で、今後資金力が問われ、マネーゲームになっていくのではないかと予想しています。外資系を含めた複数のプラットフォーマーがM&Aや提携を進めていって、最後はいくつかが勝ち残る。本当の資金力が問われる。そこの戦いは我々の主戦場ではないのかなと思っています。中途半端な、ニッチなプラットフォームをつくったとしても、さほどのマネタイズにはならない。いまからテレビ局をつくるというわけにもいかない。

そうであれば、やはり僕たちが目指すべきなのは、プラットフォーマーが欲しがる、もしくは「一緒につくろうよ」というようなコンテンツを持つことだと思うんですよね。

ネットフリックスは本当にすごいなと思いますし、考えているビジョンが最初から世界というスケールを見てやっています。僕らもどうせ考えるんだったら、「いや、それ無理でしょ」と思うことを想定して世界を見据えてつくっていきたい。苦しいですけど、そうなったときにリターンはものすごく大きいと思います。

プラットフォーマーとwin-winになる


僕たち人気者やコンテンツを作っていく会社としては、いかにスケールの大きいコンテンツを作れるかが2020年以降の大きなポイントになってくると思います。強いコンテンツを持っていれば、巨大なプラットフォーマーと関係値としてはwin-winになれる。コンテンツの強さはそこにあるんじゃないかなと思います。究極的には。

日本もすでに地殻変動が起こっています。世界の巨大なプレーヤーたちと渡り合うために、強力なIPをつくれる会社、提供できる会社として勝負したい。それがいまのエイベックスのステイタスであり、アイデンティティです。

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文=林亜季、写真=小田駿一

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