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なぜエイベックスはCDからライブにシフトできたか


僕はキャリアにおいてずっとライブをやってきました。CDビジネスが全盛でパッケージが400万枚、500万枚売れていた2000年代にコンサート事業を始めましたので、CDの収益率は高くていいな、とずっと思っていました。コンサートはどうしても足し算、積み上げですので、爆発的に成長するというわけにはなかなかいきません。

エイベックス 黒岩 社長
シンガポールにて撮影

一方である程度時代を、未来を想定したときに、どんどんテクノロジーは発達していきますし、CDを聴くというスタイルがアメリカではどんどんなくなっていくのではと言われていました。そうなると、「物を買って所有すること」から「体感していくこと」の価値が上がってくるだろうなと考えていました。やはりコンサートはアーティストにとっても、お客様にとっても、非常に大切な場になっていくだろうなと。

それで、コンサートを超えるテクノロジーを考えたときに、VRや仮想空間でのライブ演出、ホログラムなど、様々なことを想定しましたが、でもやはり生身のリアルタイムのライブ、血が通っているライブは現場でしか体験できない。この、血が通っているアナログ的な体験をテクノロジーが埋めることはたぶん、10年スパンでは難しいだろうなと思いました。

例えばスポーツ観戦、ライブ、フェスなど、ネットが充実しているからこそ、コト消費は絶対増えていくだろうなと。じゃあライブは伸びるだろうと、これは客観的と主観的な感覚の両方でありました。

グロスメリットでライブ事業をドライブ


ライブは1、2アーティストよりも、何十アーティスト、何百アーティストを手掛けることによって、グロスメリットを得られます。まず会場がないと、いくらスケジュールが空いていても公演ってできないんですよね。そうすると例えば東京ドームのような大きな会場と交渉する上での優位性って、ある意味、グロスメリットがないと難しいんです。

そこでいろんなアーティストのライブを手掛けるようになり、グロスメリットが生まれていくと、いろんな意味で転がり始めていきました。

ライブは市場自体もここ数年伸びています。国内だけでなく海外もライブ市場は伸びています。テクノロジーが発達するほど、コト消費に価値が生まれていく。この傾向は5年、10年は続いていくと予想していますので、今後もしっかりと押さえていきたいです。

「ULTRA JAPAN」やるのはエイベックスでしょ


2014年に「ULTRA JAPAN」を日本で初開催しました。2010年ぐらいから、本拠地の米マイアミに行って交渉を重ね、ようやく初開催できて、6年が経ちました。ちなみに韓国ではもう2012年からやっていて、ここも韓国のほうが早かったんですよ。

世界の音楽シーン、ダンスミュージックシーンがグローバルで勢いを増している中で、我々はダンスミュージックが本流にあるレーベルにも関わらず、果たして世界の潮流をつかんでしっかり乗っているのかと。会社としてそこに取り組めていなかったのではないかと反省しました。日本の感度の高い人たちの間で、世界の人気DJを集めたフェスティバルに参加したいという意識が高まる中で、「これをやるのはやはりエイベックスでしょ」という思いがずっとありました。

ただ、残念なことに、日本でオリジナルでは作れなかったんですよ。それはなぜか。日本オリジナルで世界に通用するアーティストがまだ少ないんですよ。だからグローバルなイベントをそのまま持ってきて、日本のマーケットに適用しました。すると大反響があり、ものすごくチケットも売れて、2年目、3年目とやると、全国で同様のフェスが広がっていきました。

世界最高峰のダンスミュージックフェス「Ultra Music Festival」を最初に持ってきたのはエイベックスにとっても大きかったと思います。おかげさまで大盛況で、今も続くイベントになりました。すごい転換期だったと思います。

文=林亜季、写真=小田駿一

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