【独占】エイベックス黒岩克巳社長、逆風と勝算「それでも、コンテンツメーカーであり続ける」

エイベックスの黒岩克巳代表(写真=小田駿一)


簡単に利益が出るものではない


ショーを個別の収支でみれば、採算が難しい場合もあります。ただ、ああいった夢のあるコンテンツは、最初から採算を合わせなくても、ある一定ラインを越えて市場が大きくなったり、需要が大きくなったりすれば、間違いなくグロス的な収益は取れてきます。個別のショーの採算というよりは、年間を通して「STAR ISLAND」プロジェクトでどれほどの収益が生めるのかが、これからのポイントになってきます。

例えば昨年のサウジアラビアのショーは建国記念日のお祭りなので、政府の買い取りで興行のリスクはありません。利益がしっかり確保できました。一方、興行の形ですといかに有料の客席を埋めるかにかかっています。何回か実施することによって適正価格やニーズが見えてきます。そのノウハウをつかむとだいぶ安定的な収益も見えてくるので、まずはそこまで頑張りたいです。

新たなエンタメコンテンツというものは簡単に利益が出るものではないと思っています。そういう苦しい道のりがあって、ノウハウがたまっていって、自分たちのオリジナルの収益構造をつくれたときに、ビジネスモデルとしてもなかなかまねできないコンテンツになってくるのかなと思います。

アーティスト軸ではなく、長く人気を得られるIPを財産に


また、これまでエイベックスはアーティストやスターがいて、スターの名前で興行をずっとやってきました。スターの人気度によって移り変わりがあったり、やはり人間ですので、グループでしたら解散ということもあったりと様々なリスクがあります。

アーティスト軸のコンサートはその人が中心になりますし、社内にノウハウもたまっていますので、大体どれくらいのお客様が動員できるかはデータ上計算できます。浜崎あゆみだったらこれぐらい入るよね、と。しかし、誰かアーティストが出るからチケットを買うという性質ではない「STAR ISLAND」みたいなショーは、同じ興行でも種類が違うのです。ショーやコンテンツ自体に魅力があってチケットが売れていくという興行を強化することで、エイベックスの新たな強みになってくると考えています。

例えば「シルク・ドゥ・ソレイユ」や劇団四季さんの「ライオンキング」などは作品として確立し、長く人気を獲得しているIPです。将来的にIRができ、世界の人が日本を訪れたときに、「エイベックスのあのショーを見たいんだよね」というコンテンツをどれくらい生み出せるか。「STAR ISLAND」のチャレンジを足がかりに、そういった財産を築いていければと思っています。

最初はお台場の海浜公園でスタートし、東京ではすでに3度開催しました。最初は花火と、3Dサウンドの音楽と、パフォーマンス、この3つの融合は、回を重ねるごとにかなり進化しています。またサウジアラビアは国のカラーが緑なので、緑の花火を半分ぐらい上げる、サウジアラビアの伝統舞踊と音楽を演出に加えるなどローカライズにも取り組んでいます。

今回のドローンと花火は、実は当初からやりたかったことです。日本だと規制でなかなか実現できなかったのですが、シンガポールでああいうトライができた。そうなるとやはり日本でもやりたい。だけど規制緩和をしていかないと新たなエンターテインメントや体験はつくれない。何とか日本でもレインボーブリッジや東京タワーを背景に開催して、新たなエンターテインメントが生まれる土壌をつくれたらいいなと思っています。

今年はオリンピックイヤーです。去年も7月に豊洲でやりましたが、開催決定の発表はできていません。でも、世界から多くの方が訪れているタイミングだからこそ、世界に発信するチャンスだと考えています。最後まで実現する努力をしていきます。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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