【独占】エイベックス黒岩克巳社長、逆風と勝算「それでも、コンテンツメーカーであり続ける」

エイベックスの黒岩克巳代表(写真=小田駿一)


「STAR ISLAND」が広げた世界とのコミュニケーション


アニメも、ゲームも、アーティストも、やはりグローバルを意識してつくっています。そういった意味では、一番分かりやすいのは「STAR ISLAND」です。世界各地の象徴的なロケーションで行っている、日本の伝統花火と最先端のテクノロジー、世界最高峰のパフォーマンスを掛け合わせたエンターテインメントです。

2018年、2019年とシンガポールの大晦日のカウントダウンで「STAR ISLAND」をやりました。2020年を迎えた今回のシンガポールのショーは、正直、予想以上にいいショーになって驚きましたね。ドローンとパフォーマンス、レーザーなどの演出を含む総合エンターテインメントと花火をあの規模で融合させたショーは、おそらく世界に例がないと思っています。

STAR ISLAND

花火だけ、ドローンだけというショーはありますが、今回は花火、ドローン、マリーナベイの背景が掛け算になり、全てが融合するショーになっていたと思います。

シンガポールでは東南アジアや中華圏だけではなく、中東地域や欧米の方々が見に来てくれてコミュニケーションが生まれ、エイベックスという会社の認知と理解が進み、「こういうことを一緒にやりませんか」という話につながっています。これからの時代は一匹狼でやるというよりは、いかに外部と連携し補い合いながら新たなものを提供していくかが世界的に問われていると思います。

いま僕らにしか持ってなくて彼らが欲しいもの、彼らが持っているもので僕らが欲しいものを掛け合わせて、「STAR ISLAND」を起点として世界各地でコミュニケーションを生み出していきたいです。

STAR ISLAND

またいま、中東地区についても日本のIP、アニメやVTuberなどが勝負できる可能性は非常にあると感じています。「STAR ISLAND」で昨年サウジアラビアに行ったんですが、サウジアラビアはこの2年間ぐらいで娯楽が解禁された国なので、エンタメが熱望されている感じがありました。僕たちがSTAR ISLANDをやった次の週にBTSのライブがサウジアラビアであって、6万人も入っているんです。なぜそんなに、と調べていくと、YouTubeなどネット環境が早くから整備された国なので、特に欧米のカルチャーについては馴染みがあるんですよね。そして国としても解禁された。エンタメへの枯渇感、願望が非常に強いと感じました。
 
それぞれの地域性に対するコンテンツづくりを徐々に強化していきたい。ここから実装していって、でも失敗して、検証してという戦いを各地でやり続けます。科学的に、マーケット的にはこういうコンテンツがいま求められているという論理は誰でもつくれるんですが、最後は人の情熱や思い、感性が合わさって初めてヒットが生まれると思っています。一つ事例を生み出すことができればほかにもつながっていくと思いますが、一つも生み出せなかったら多分もう終わり。危機感を持って臨んでいます。

「STAR ISLAND」についてはショーとしてのブランディング、認知度ではまだまだですが、やれるところまでやり続け、テクノロジーとともにどんどん進化していきます。エイベックスの一つのIPとして、また日本から世界に発信しているコンテンツという意味でも、すごく大切にしていかなきゃいけないのかなと思っています。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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